2012-07-15

ある種究極の俳句について呟く岸本について 岸本尚毅

[追悼・今井杏太郎]
エッセイ
ある種究極の俳句について呟く岸本について

岸本尚毅


手元にあった今井杏太郎の『海鳴り星』から以下のような句を引きました。

南より西より春の風吹いて
「東より北より秋の風吹いて」とどこが違うのでしょうか。

春は曙の燈台ともりけり
巧いですね。

短夜と思へば風のありにけり
何なんでしょうか、この短夜の気配は?

片陰もゆふかげりしてゐたりけり
夕方の暗くなり始めた頃の片陰とはまさにこういうものです。

ゆふかぜに吹かれて土用波の来る
夕方の明るさ、あたたかい風。遠くからやって来るうねりのような波。

風鈴を吊ればしづかに鳴りにけり
チリーンとそれは静かに鳴るのです。

南より北のあかるい秋の空
北の明るさ・・・かなしいですね。

日は西へ傾いてゐる寒さかな
この句を見ると、拙句〈日沈む方へ歩きて日短〉がつまらなく見えて来ます。

遠いところに星のある寒さかな
そう、星って遠いんですよ。

こつこつといふ音のして枯るる山
ガサガサとかカサカサはよくあるのですが、コツコツッという音もあるんでしょうねえ。

杏太郎さん、ありがとうございました。

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