2013-03-17

1句ずつ選ばせていただきました 上田信治

1句ずつ選ばせていただきました

上田信治


65作品から、1句ずつ、選ばせていただきました。

御意に適う句がありましたでしょうか。
ぜひぜひ、各10句にも、お目通しください。

第3回週刊俳句10句競作全作品

タイトルのあとに(*)がついているのが、予選通過作。
本選ライブが楽しみです。


1.死真似  
木の芽雨のっぴきならぬ音立てて

2.薹  
祝祭の歌を並べて鞭の冬

3.黙  
なにもなき庭に廊下のうす明かり

4.傾ぐ癖 (*)  
雪解の橋がびしよびしよ昼の月

5.ひと (*) 
・・・・・さて渉らむか天の川 

6.寒  
額縁を右に傾げてゐる寒夜

7.雪痕  
指さしてこれはスノーチェーンの痕と

8.雪の国   
雪国の中の私の雪の国

9.横断  
灯台に毒蛾発生西瓜喰ふ

10.座頭市  
無駄なことおよしなさいよ冬が来る

11.ビュンと  
野鼠を僧侶へ昇華する調べ

12.サドゥバリー  
真ん中の沈みし屋根に雪積もる

13.冬がひとり行く  
ふたつ猫おいっと呼べば逃げていく

14.共鳴 (*)  
くちびるのやはらかさにて花ひらく

15.さっきまで (*)  
運動会だつたやうだねさつきまで

16.俳句  
主婦の手をこぼれし浅蜊口開かず

17.花綵列島  
探梅に一枚岩となりゆけり

18.山笑ふ  
雪解野に指切りの指探しけり

19.失職日  
あうあうと終いの冬を食べている

20.鬼の村  
先祖代々鬼の裔なる村祭り

21.家出  
ぼくとぼくとぼくがころんだ

22.待春
春待つ言葉キーボードより溢れ

23.瓶の底
むらさきの折鶴に息吹けば雪

24.記憶
厳寒の絶対に動かない石

25.喪失 (*)
こんなに晴れて税金のしくみが解らぬ

26.桃の花
向日葵やエゴン・シーレのために枯る

27.肩こり (*)
肩こりの広がっていく寒の雨

28.日曜日 (*)
花の種蒔いてしづかな日曜日  

29.春の雪 
春の雪枝のみかんの皮のこる

30.採光  (*)      
下萌や人集まつて袋置き

31.雪の華
サボテンをふはりと包み雪女

32.猫の子 (*)
卓袱台を三つつなげる春祭

33.ドーナツの穴
厨房に春待つシェフの腕時計

34.門限 (*)        
カステラの描写細密寒波来る

35.風の日 (*)  
春めくや塀より長き箒の柄

36.頭蓋の聖母
わが脳の吠え猿どもがまた孕み

37.なんまんだあ
鮪はしるよ雪夜も瞼ぴかぴかと

38.上毛かるたのうた
ね:ねぎとこんにゃく下仁田名産
裸踊りは猿後家の
葱とこんにやく
いらんかえ

39.帽子 (*)  
マネキンに涙描かれ冬の蝶

40.みなしご (*)  
ひらがなでつくる小鳥や雪のこゑ 

41.モヨロ人
雪しまく庭真っさらにカレーそば

42.何の国 (*)       
振付をぬるぬるとして春の山

43.家霊 (*)           
かげろひて鳥の骸をつつく鳥

44.不穏
水仙と棍棒紙につつまるゝ

45.ショー (*)
黒兎抱かれシャンソンの中は雨

46.メルヘン (*)
きれいなドラえもんきたないドラえもん

47.越冬
木の芽風だんだん太くなるピアス

48.お年頃 (*)
蝶々のこぼれる涙袋かな

49.風花
二階には人がいるらし夏の雨

50.わたしの音楽
ジュークボックス叩けば唄ふ春の暮

51.新世界心中      
仔猫もろとも終の戦車に乗り込まう

52.その時
薔薇愛でる配管工にある疑惑

53.夏草 (*)
葉桜や机の下で打つメール

54.FUKAIPRODUCE羽衣「サロメvs.ヨカナーン」より (*)
雨粒はチュッパチャプスのごと長閑

55.転ぶ (*)
はぶらしに水の妖精いつも居る

56.オートリバース (*)
朧夜にロールキャベツは泳ぐなり

57.親しき水
こな雪のすきますきまに青の粒

58.春ですね!
春の野にでんぐり返る森光子

59.頽落の日々 (*)
主老ゆ春蚊のごとく訪ぬれば

60.自由帳
冬の夜やビニルの覆ふ屋台村

61.春水 (*)
一列になりて歩くや水温む

62.カミングスーン
陸橋のみんなが手ぶらしゃぼんだま

63.絡繰
日のあるうちに三月となりにけり

64.見えぬもの (*)
鳥帰るプレハブ校舎に換気扇

65.異識墓
邂逅の冬腐食する雷光


ご応募いただいた、みなさま、誠にありがとうございました。



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