2013-09-29

自由律俳句を読む 13 河東碧梧桐〔1〕 馬場古戸暢

自由律俳句を読む 13 河東碧梧桐〔1

馬場古戸暢


河東碧梧桐(かわひがしへきごとう、1873-1937)は、高浜虚子とともに「子規門下の双璧」と呼ばれた俳人である。子規によって、「虚子は熱き事火の如し、碧梧桐は冷ややかなる事氷の如し」と評されたことは、よく知られている。荻原井泉水の『層雲』に参加して後、中塚一碧楼とともに『海紅』を主宰するに至る。五七五の定型からの解放を目指した碧梧桐の試みは、その後の自由律俳句の発展へつながっていくのである。

紅い椿白い椿と落ちにけり  河東碧梧桐


子規によっても評価された、碧梧桐の代表句。中学生の国語の教科書にも載っているので、ご存知の方も多いだろう。赤と白の対比が美しい。恥ずかしい話、私がこの句を碧梧桐のものと認識したのは、自由律俳句を詠みはじめてから数年が経った頃のことであった。なぜか、荻原井泉水のものと誤解していたのである。

曳かれる牛が辻でずっと見廻した秋空だ  同

この句も、比較的知られているように思う。秋空の広さや深さをこのように表したものは、あまりないのではないか。

君を待たしたよ桜ちる中をあるく  同

甘くて暖かい雰囲気が漂ってくる一句。「君を待たした」という言葉に感じられる自意識が、またよい。若い二人の逢瀬としても読むのもよいが、白髪の二人が歩いている様とみなすのもよいだろう。


鴨むしる肌あらはるゝ  同

そのままといえばそのままだが、人による殺生の淡々さを綺麗に描いていると思う。「鴨むしる/肌/あらはるゝ」と読みたいところ。

巣の蜂怒らせし竿を捨てたり  同

面白がって蜂の巣をつついて遊んでいたところ、巣にいた蜂が怒りだした。竿を捨てて、一目散に逃げかえった。作者自身の最近の経験を詠んだものとすると、なかなかに面白い。何をやっているんだと言いたくなる。


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