自由律俳句を読む 20
北田傀子 〔2〕
馬場古戸暢
前回に引き続き、『傀子集』(随句社、2011年)より北田傀子句の鑑賞を行う。
そばの耳のイヤリングが揺れやまぬ 北田傀子
女が走ってやって来て、息を整えているところだろうか。それとも、作者の横で女が体を動かし続けているところだろうか。いずれにせよ、作者のまなざしが女の耳のイヤリングに向いたところに、面白みを感じる。
鉛筆の香りの居眠りだった 同
居眠りから目を覚ますと、まず最初に飛び込んできたものが鉛筆の香りであった。なにかいい夢を見たような気がするが、それはこの鉛筆の香りがなしたものだろう。さて、また書き仕事に戻ろうか。
春の蛙跳んでころんだ 同
この蛙の失敗は二つ。もっとも活躍できる季節に、よりによって大得意の跳躍で転んでしまったこと。そして、その現場を、よりによって自由律俳句を詠む人間にみられてしまったこと。その結果、件の蛙の失態は、未来永劫にわたって人間の世界で保存されていくことになったのである。
麦の秋の二人とも案山子 同
二人が案山子であることに気付くまでに、大分時間を要したように思える句。のどかな秋の、のどかな風景、のどかな作者。
老いの酔いで抱いて抱かれた 同
齢を重ねても、酔いに身を任せてしまうことがあるのだろう。静かで艶美な世界が、この句には充満している。
※掲句は北田傀子『傀子集』(2011年/随句社)より。
2013-11-24
自由律俳句を読む 20 北田傀子 〔2〕 馬場古戸暢
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