11 ならば踏めよと ハードエッジ
忘らるるならば踏めよと落椿
対岸の蝶々が見えるほどの川
一幅のふらここに乗り漕ぎ出でな
散り初めしその花明り水明り
春雨や作つてくれし卵焼
いふなれば昼行灯と春炬燵
花の雨水の流れとなりにけり
ホ句といふ小箱の中に桜貝
行く春や大きな船を引く小舟
挨拶の楽しき五月来りけり
ハンカチはすぐに乾いて真四角
夜を待つは紫か黄か花菖蒲
折畳傘の袋が梅雨の道
見てみたし十薬の根の張り具合
曝しある書のこれからを思ひけり
爺死んで婆残りたる茅の輪かな
痒からん蝉となるべく背を割るは
親指と人差し指とアイスの棒
会釈して打水の端を通りけり
ふるさとに昼寝をせよと言はれけり
またひとつ蝶来て蜘蛛を太らする
もの腐る季節となつて蝿も出て
出るものを出して身軽や暑気中り
灯台に蛾が張り付いてゐたりけり
噴射口こちら向きなる西日かな
足元を船の貫く橋涼み
手花火を草に浴びせて草燃えず
ががんぼが正面にもの申しをる
すやすやと赤子の眠る遠花火
盆の月暑さ寂しくなりにけり
秋の夜のしばらく湯気を立てしもの
座布団に坐してこれより月の舟
赤ゆゑの寂しさに群れ赤とんぼ
鶏頭を切つて滴るもののあり
この牛は肉になる牛草の花
柿干すや目鼻かそけき赤ん坊
運動会その翌日が土砂降りで
亡き人は生きてゐし人秋の暮
明るくて銀杏落葉の日と思ふ
焦がれとは枯れたるものの中にかな
時雨るるや火はらふそくと線香と
長き長き文字なき時代帰り花
使ひ古されたるものと冬籠
数へるにしても短日ばかりなり
灯して提灯鮟鱇去年今年
当選と云ふべし初日当りけり
泥んこになつて作りし雪だるま
寒禽に生きよと赤き実ありけり
兄弟の眠る白息長短
寒鯉や雨はすべてを濡らし行く
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2013-11-03
2013落選展テキスト 11ならば踏めよと ハードエッジ
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1 comments:
11 ならば踏めよと ハードエッジ
忘らるるならば踏めよと落椿
「口調」を手のうちに、ほどよきリズム感をキープ。
一幅のふらここに乗り漕ぎ出でな
親指と人差し指とアイスの棒
灯台に蛾が張り付いてゐたりけり
盆の月暑さ寂しくなりにけり
この牛は肉になる牛草の花
運動会その翌日が土砂降りで
時雨るるや火はらふそくと線香と
一連、きもちよく、読みました。
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