2013-11-03

2013落選展テキスト 3今朝のバス 嵯峨根鈴子

3 今朝のバス 嵯峨根鈴子

さかさまに雲浮いてゐる梅日和
丸椅子の駅前食堂春の泥
吸殻のこんもりとあり梅畑
さへづりや野菜の花の皆ほほけ
水温むくちなは色に街は暮れ
手探りにスイッチ押しぬ雛の部屋
ぬくさうな月現るる花大根
この雛のかほには少し嘘がある
さやけしや桜うぐひを語る指
抽斗に小石の眠る卒業歌
淡竹折るこきと手首を反しをり
葉桜や鵜の水走みじかくて
水無月へ毛鉤のラメのよく動き
蛍籠さげて来たりし疲れかな
大鍋に湯が沸き守宮誤作動す
花あふち浴びながら手話早口に
捩花やパターゴルフのカップに水
蛇苺サンダルの砂手で払ひ
吾にほたり土にほたりと柿の花
水母浮くとちゆう騒がし金環蝕
たのしくて舟虫増やしゐる踵
溶けかかる海月に闇のやうな昼 
みな帰りたる噴水に話がある
残像を先にたたせて御器噛り
灯を消して部屋広くなる蛍籠
くもりのち胡麻斑天牛啼かす哉
白靴に履き替へ記憶の人となる
月の出やオクラの花がほうと咲き
紫蘇の葉に穴あいて金星に影 
薬缶冷やす流れを逸れて草の花
毬栗や破顔大きく来たりたり
風景に後れてゆるる秋桜
水中へ飛びこむ陽射し新松子
封筒を吹いて銀杏詰め込んで
日輪のいくつ落ちたる蕎麦畑
ミシン目に峠ありけり色鳥来
月代へそろりと落すレコードの針
かまきりに押されて昼の港まで
神の手のさつと掠めしゆりかもめ
今朝のバスサンタクロース貼りつけて
てぶくろのわめく形やまた嵌める
御降に宙ぶらりんの観覧車
両乳房寄せて悴む帝国ホテル
段通にかかと浮きをり風邪ごこち
つつしんで狐が語るわたしの言語
かんたんな夜がきてゐる白ふくろふ
亀鳴くやすこし前ゆく新聞紙
なはとびのひとり消えたる養花天
震度5がくるぶしにある雛納
全員のたどりつきたる春の罠
 

1 コメント:

天気 さんのコメント...

>かまきりに押されて昼の港まで

カマキリのあのポーズは、何かを押していく格好にも思えてきました。

どこまで、というに、「昼の港」。

のほほんと秋の明るさに包まれた感じで、とても気持が良いです。