2013-11-03

2013落選展テキスト 7分銅 杉山美鈴

7 杉山美鈴 分銅

分銅の失せし秤に月乗りぬ
爪上ぐる毛ガニスーパー午前二時
時折は星の巡るか熊の穴
めだか売り捨てたる水の生臭き
蚊帳の中死ぬ夢を見て泣く児かな
立春や薄き手紙の封固し
蛍光の地下鉄ホームに花の屑
柔らかき檻に足跡朧月
虫の眼の撒かれしごとき灯夜間飛行
水切りの桔梗咲きたる朝ありぬ
春鳥鳴く問はれしことの多くあり
かなぶんの五色の腹や朝きたる
つぶやけるままごとに似て盆の膳
終雪や触手の群れに耐えてゐる
駅過ぎて右に曲がれば蝶の道
おぶわれて肩越しの夕日溶け始む
ジイッと呻き蝉になることを考えている
さそり座にツリーあるらし赤き星
入梅や瞼を閉ぢる魚ゐて
つぶやく男五月三叉路で
さはれない山の閉ぢゆく夏の昼
指紋消え捲れぬ頁の薄さかな
虫止んで宇宙すとんと完結す
寒月や傷の縫ひ目の粗きこと
腐りゆく花ぽつぽつと春の宵
宙吊りの部屋窓のすべてに雪貼り付き
虫葬り明日帰るべく爪洗ふ
秋涼や涙のあとの肩車
もう誰もいない水面下10センチ
花筏眠らぬ鳥を揺らしをり
雪作る雪の時間に溺れゆく
黒き池花の残滓を喰うあひる
十三夜うろこを散らす魚かな
靴音やインクの壺に冬入りぬ
雪しまき音成す前の音とゐて
灯を消して私を消して見える雪
すでにそこは空ではないのか流星群
天の川の映る鉄路を猫の行く
鬼灯を暗きに置ける指白し
秋時雨夜の秤の傾きぬ
誰が待てる人の行き交う西日かな
五月闇土の喰みたる音を聞く
飛べぬ鳥が風を受けゐる立夏かな
汚泥積む艀は進む鵜は残る
風見せて聞かせて椎の夏木立
脇腹に汚水背に雪運河膨張す
通風孔に噴きあがりたる花の屑
かなぶんの骸流して大夕立
飯括る藁の牛馬の細き脚
父若く向日葵に蛇みっしりと


4 コメント:

天気 さんのコメント...

>かなぶんの五色の腹や朝きたる

腹部があらわ、ということは、死んでいる。

「朝きたる」が、ぐっと来ました。

杉山美鈴 さんのコメント...

天気様
杉山美鈴です。
コメントいただきありがとうございました。”ぐっと来ました”の感想をいただいたのは生まれて初めてのことで、私のほうがぐっと来ています。
ほかの句についても是非コメントをいただきたい…辛口でも受け取る覚悟はできています。
お忙しいことと思いますが、この図々しい願いを聞き入れていただけたら嬉しいです。

上田信治 さんのコメント...

(では、天気さんの代わりに)
7 杉山美鈴 分銅

飛べぬ鳥が風を受けゐる立夏かな

ちょっとイヤな感じ、ちょっと孤独な感じを表す言葉をみつけて、それをぽきぽきと展開していく。作者の構成意識の範囲内で書かれていく、ので、ちょっと理屈っぽく、ちょっときゅうくつになる(あと同パターンが多くなる)。〈分銅の失せし秤に月乗りぬ〉〈寒月や傷の縫ひ目の粗きこと〉とか。

掲句は、理屈丸出しのぶん、かえってばかばかしくてよいです(口調はたどたどしいですが)。

爪上ぐる毛ガニスーパー午前二時

中で、こんなのは、ちょっと現実感があってよいです(午前2時のスーパーは、蟹は奧にしまってしまっていると思うけれど)。

天気 さんのコメント...

わたくしも、追加でコメントを書き込みます。お時間を頂戴することになりますが。