2013-12-08

【週俳11月の俳句を読む】診断、作者の俳人年齢は。 山田露結

【週俳11月の俳句を読む】
診断、作者の俳人年齢は。

山田露結



健康診断に行くと実際の年齢は40代なのに医者から「あなたの骨年齢は60代ですよ。もう少ししっかりカルシウムをとって下さい。」なんて言われたりするんですけどね。それで、しばらくは気をつけて小魚を食べたりしてみるんですけど、どうも、なかなか続かない。酒も煙草もやめられないしスポーツもしない。この頃急に老眼が進み出したり歯がガタついてきたりして、私の身体年齢はとっくに実年齢を追い越して、着実に先へ先へと進んで行ってしまっているようです。
さて、そんなわけで、今回、11月の週刊俳句に掲載された作品を読みながら、それぞれの作者の「俳人年齢」なるものを勝手に診断してみました。まったく私の独断と偏見です。悪しからず。

大いなる真昼や海桐の実が熟れて   岩淵喜代子

ついウトウトしてしまいそうな静かであたたかな昼のひととき。何をするわけでもなくゆったりと時間に身を委ねている。ふと海桐の実に目がいく。油っ気の多いの若者の視点ではなさそうだ。

日曜の広場へ蹴り出す鬼胡桃
誰からも見えて広場の冬帽子
パソコン壊れ冬の泉がわが広場
冬雲雀第二広場は石畳
冬萌や石に埋もれし石の貝
冬ざれや古墳を据ゑて大広場

とくに目的があるわけでもなく、休日の広場をウロウロ。作者は一人暮らしだろうか。冬の澄んだ空気の中、どこか異空間めいた広場の風景がひろがる。

梟を迂遠の果てとしてゐたる

 「迂遠の果て」という着想の先にちらちら見えるのは自らの死だろうか。

梟に胸の広場を空けてをく

「死」の暗喩としての「梟」。作者は動じることなくそのときを迎え入れる心の準備をしている。実景の広場から「胸の広場」への展開がいい。
診断、作者の俳人年齢は74歳。



林檎噛む時々顔を歪ませて   相沢文子

歯肉炎だろうか。

目薬のゆきつく先のそぞろ寒

目薬がじんわりと目の奥に染みてくるのを感じとっている。そのゆきつく先が「そぞろ寒」なのはやはり年輩の感覚だろうか。

片方の耳が小鳥をとらへけり

この頃少し聞こえが悪い?

俎板の傷光りをる小六月

「俎板の傷」に光を見るのは熟年主婦の視点?

外套にきのふの風のにほひかな

コートではなく外套。夫のものか。「きのふの風」の感慨は昔を懐かしんでいるようにも。シルバー世代?

爪楊枝噛みすぎてゐる一茶の忌

やはり歯が悪いらしい。
診断、作者の俳人年齢は68歳。



燈火親し眼鏡を透かす拭く掛ける   関根誠子

ロイド眼鏡のようなアンティーク調のお洒落な老眼鏡であって欲しい。

冬来ると思ふパスタを残さずに 

寒い季節に向けてしっかり食べて体力をつけておかなければ。なんとなく、もう若くはないという自覚が芽生えはじめているのか。

色抜けし狗尾草よおまへもか

誰でも歳をとるもの。とはいえ、やはりさびしいもの。

冬うらら水揚げてゐるモネのポピー
初時雨ガラスケースのツェッペリン号
抱かれ傷みのアンティークドール冬ともし

お気に入りの調度品の置かれた書斎は作者にとって居心地の良い隠れ家。作者の趣味の良さがうかがえる。

山眠るわたしは何を探せたか

ぼんやりと半生を振り返ってみたりして。でも、まだ自身の老いを自覚しきれていない微妙な年代なのでは。
診断、作者の俳人年齢は62歳。



霞むまで線路真つ直神の旅   大和田アルミ

真っ直な線路はどこへ向かって伸びているのだろうか。作者はまだ未知の未来を抱えている年齢。

大鉢に盛つてごつごつ新豆腐

「ごつごつ」という措辞と「新豆腐」との組み合わせが放つ心地よい違和感は作者名の「大和田」と「アルミ」の組み合わせにも感じられる。比較的若い感覚?

桃剥いてそこここに付く指の痕

ああ、この桃の熟れ具合がずばり作者の俳人年齢ではないか。48歳。



途中から猪垣に沿ふ下山道  本井 英
猪垣の内と外との立ち話

リュックを背負って日帰り登山だろうか。どうやら高齢のようだ。

荻わけて釣座へ小径ありにけり
閘門の照らされてゐる夜寒かな

まわり道をしているうちに空が暗くなってきてしまった。今日は山間の宿で一泊。

啄木鳥は幹の裏へと行つたまま
城跡や柄長まじりに山雀も
高く飛ぶときも鶺鴒波描き

小さいながらも命いっぱいに生きる鳥たちの姿に目を細めている優しいおじいちゃん。
診断、作者の俳人年齢は73歳。



すこしづつ街乾きをり秋の蝶 山岸由佳

「街」の把握がやや大掴みか。

星飛んで人の匂ひをなつかしむ

孤独人を気取ってみたり。

みづうみの傷つきやすき赤蜻蛉

ナイーブな感受性を表明してみたり。

銀杏降る夜空へ近き交差点

この夜空への距離感も若い女性らしいポエティックな情緒といえるだろうか。「銀杏降る」が夜空を邪魔してて、やや座りが悪い感じも。
診断、作者の俳人年齢は33歳。



かたや魔弓こなた鎌先夕刻に  仁平 勝
愛の飢え拾う身も老け年越しぬ
意志妥協困る言い草警告す
食い気出す巫女たち若きもっと耐え
苦労抱き横も苦労だ腿こする

軽いお遊びといえばお遊び。でも、こういったお遊びに「がんばった感」、「ドヤ感」を残すのは無粋というもの。そういう意味では、10句に付された「改題」はまったく不要だったのでは。老化によって表現がくどくなるということもあるだろうか。気をつけなければ。
診断、作者の俳人年齢は78歳。

さて、プロフィール欄で実年齢と照らし合わせてみましょうか。


第342号2013年11月10日
本井 英 柄長まじりに 10句 ≫読む
山岸由佳 よるの鰯雲 10句 ≫読む
仁平 勝 女の園 10句 ≫読む
第343号2013年11月17日
関根誠子 ナッツの瓶  10句 ≫読む
大和田アルミ 桃剥いて 10句 ≫読む
第344号2013年11月24日
岩淵喜代子 広場 10句 ≫読む
相沢文子 小六月 10句 ≫読む

0 コメント: