2013-12-08

朝の爽波95 小川春休



小川春休




95



さて、今回も第四句集『一筆』の「昭和六十二年」から。今回鑑賞した句は昭和六十二年の秋、中秋の名月の頃を含む時期かと思われます。「青」の昭和六十三年一月号が四百号記念号に当たることから、準備万端、この時期から編集に取り組み始めていた模様です。

もろこしの髭をたくさん見て訪ひぬ  『一筆』(以下同)

たくさんのとうもろこしの髭は、大きな畑で育てられているのか。それとも辺りの農家がそれぞれに育てているものか。歩を進めれば目の前に広がる、光に満ちた景。訪う人と訪われる人という関係が、景を自然に展開させ、また景を温かなものにしている。

お習字の濡れてゐる間のゑのころよ

「お習字」との言い方から、子供の手習いの景と思われる。何枚もの半紙に書き上げた中から、一番出来の良いものを選び出す。墨をたっぷり付けて書いた元気の良い字が、まだ濡れている。窓外には揺れる猫じゃらしも見え、明るい充実感に満ちた句だ。

養鰻の見廻りの灯の露けしや

「浜名湖 四句」と前書のある句の内の一句。温暖を好むため、ビニールハウス内で養殖される鰻。秋の時期にビニールハウスに居るのは、来年の出荷に向けて育てられているまだ幼い鰻であろうか。夜の闇を行く見回りの灯の露けさと、ひしめき合う小さな鰻たちと。

月白や下草刈の被り解く

月白とは、月の出頃に東の空が白んで明るくなりかかっていること。空気も澄んで、月の光も強く感じられる秋ならではの季語だ。被りをしているところから、まだ日のある内に草刈りを始めたのだろう。地の草の方ばかりを見ていたら、気付けば空はもう月白に。

月祀る薬いろいろ飲みてより

こういう句を読むと、既に爽波も齢六十を超えているということをしみじみと感じる。しかし掲句は、決して湿っぽくなることなく、「こんだけ薬飲んどいたら月見酒なんぼ呑んでも大丈夫やろ」とでも言うような、月見を楽しむ軽やかさを感じさせる一句となっている。

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