自由律俳句を読む31
きむらけんじ 〔1〕
馬場古戸暢
きむらけんじは、自由律俳句結社『層雲』同人。第一回尾崎放哉賞を受賞して以降、四つの句集を刊行し、写俳展「自由ほど不自由なものはない」を開くなど、精力的に活動している。今回は、第四句集『きょうも世間はややこしい』(象の森書房, 2013)より、数句を選んで鑑賞したい。もっとも、この書誌については、句集というよりも写俳エッセイと呼んだ方が適切のようである。
取り説跨いで猫は野に きむらけんじ
きむらけんじ句には、猫を詠んだ句が非常に多い。取扱い説明書が置いてあった縁側の外には、野が広がっているのだろう。「旅立ち」などという題名をつけたくなる景。
春の田の君は子作りから米作りまで 同
農家出身の女性ではなく、農家に嫁いだ女性を詠んだ句とみた。春の田に立つ、遠くからやって来た君は、さぞ美しかったことだろう。
嘘をついた口をすすぐ 同
そんな口となってしまう日もあろう。私も先日、嘘をついた口をすすいだばかりだ。
滑って転ぶ彼女と目が合う 同
そんな日もあろう。ここでの咄嗟の対応如何によって、今後の彼女との関係は変わってくるのである。
乳房半分見せて道を訊かれる 同
男性にとっては、少しばかり嬉しい日常のひとこま。この日の天気は晴れであったに違いない。
2014-02-16
自由律俳句を読む31 きむらけんじ 〔1〕 馬場古戸暢
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 comments:
コメントを投稿