自由律俳句を読む42
伊藤後槻
馬場古戸暢
伊藤後槻(いとうこうき、1886-1968)は、山形出身の自由律俳人。小澤碧童のすすめで、碧梧桐に入門した。1948年には、『口語俳句』に参加した。以下『自由律俳句作品史』(永田書房、1979)より、数句を選んで鑑賞したい。
をとこ快く恨まれ爪先の雪堅し 伊藤後槻
これぞ「をとこ」といったところか。雪国育ちではないためか、爪先の雪が堅し、をよくわかっていない。爪先に詰まった雪が堅いのか(溶けるか)、爪先に堅い雪があたっているのか。恨んでくる女に、雪を押しつけられているのかもしれない。
鱚の身三つ四つ結べばあるじが云ふこと 同
鱚の身を三枚程度におろし、相互に結んでいるところか。それとも、こうした表現で別の調理法をあらわしているのか。ぼんやりと食事の準備をあるじとともにしている様が浮かんでくる。
蛇を紙で包む生き物のだまつてるおもさ 同
この蛇が生きているのか死んでいるのかはわからないが、紙越しにでも生き物である(あった)ことは伝わってくる。いのちのおもさを物理的に感じるとともに、どことなく恐ろしい気持ちにもなる。
昼は細あなご割き堅気のことば 同
たまたまだろうか、『自由律俳句作品史』所収の後槻句には、魚を詠んだものが多い。後槻の生業が気になるが、それ以上に堅気のことばも気になる。どのような意味でとればいいのだろう。
桜貝ひとつ得し満願のごとき入り陽 同
桜貝を得たのは、年端もいかない子供だろう。たしかに、桜貝の美しさにはひかれるところがある。日が沈むまで探したかいがあったというものだ。
2014-05-11
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