【週俳4月の俳句を読む】
すこしの差異
対中いずみ
土よりもすこしあかるく雉あゆむ 川嶋一美
目の前の藪越しに雉が歩いていくのを作者は見止めた。
雉の雄は、かなり派手な色だから、この雉は茶色の雌だろう。
「土よりもすこしあかるく」は、想像上でも作れそうだけれど、実際に眼前にしてこそのリアリティのある把握だと思う。同じような色でありながら、少しの差異がある。日の光のなかを生きて動くものの色なのだと思う。
蒲公英の絮飛び終へて茎の赤 山下舞子
蒲公英は子供の頃からずっと見慣れた花だけれど、それでも突然あらわれるあの元気な黄色の花と、突然あらわれるふわふわの蘂の全円には、胸を突かれる。
でもこの句は、花でもなく蘂でもなく、蘂が飛んだあとの茎を詠んでいる。「茎の赤」。参ったな。
たとえば「蒲公英の絮飛び終へて」の後の五文字を、自分の心情などで詠んでしまうと句は甘く流れてしまう。
一口に写生と言うけれども、物に即して物に執して一句を成す、そのことの強さを改めて気づかせてくれた。
第363号 2014年4月6日
■川嶋一美 あゆむ 10句 ≫読む
■近 恵 桜さよなら 10句 ≫読む
第364号 2014年4月13日
■西村麒麟 栃木 10句 ≫読む
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第365号 2014年4月20日
■曾根 毅 陰陽 10句 ≫読む
第366号 2014年4月27日 ふらここ・まるごとプロデュース号
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2014-05-11
【週俳4月の俳句を読む】すこしの差異 対中いずみ
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