自由律俳句を読む48
風呂山洋三〔2〕
馬場古戸暢
前回に引き続き、風呂山洋三句を鑑賞する。
癖のある字思い出す春のデスクの上 風呂山洋三
なぜか思い出した癖のある字。しかしその持ち主は、今や職場にはいないのだろう。春日さす日の、なんでもないぼんやりと時間を詠んだ句。
初めての空泳ぐ真鯉は俺だ 同
自身の家庭に生まれてきた息子のために、鯉のぼりを一式買ってきたのだろう。自身と妻、幼い息子が暮らす家の上には、真っ青な空が広がっている。この家庭に、幸あれ。
タンバリン鳴らす子と端居のゆうだち 同
タンバリンが鳴る家の外の端居を、ゆうだちがおそいはじめたところを詠んだものか。タンバリンの音とゆうだちの音、勝つのはどちらか。
ページめくる手の早い小説だ 同
一ページあたりの文字数が少ないのか、つまらないのか、その両方か。忙しい現代人には、こうした小説がよいのかもしれない。
急いで帰ってくるはず曾孫のできた盆の入り 同
すでに亡き祖父を想う、父親になったばかりの男が詠んだ句。そりゃあ祖父も、急いで帰ってくるほかないだろう。あなたの血を、この子へ継がせることができました。
2014-06-22
自由律俳句を読む48 風呂山洋三〔2〕 馬場古戸暢
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