2014-07-20

10句作品テキスト 鴇田智哉 火

 火   鴇田智哉

すりガラスから麦秋へ入りたる
ハンカチが平たくひらき日は一つ
河骨のちかく通話をしてゐたり
蒲の穂の点々と昼うしなへり
さみだれの部屋が頭蓋とずれてある
玉虫が交叉点へとうすれゆく
水母かもしれない服を着てうごく
かなかなといふ菱形の連なれり
からすうりの花に子供のゐてしまふ
火が草へうつり西日にとけこめり


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