1 霾のグリエ 赤野四羽
姥桜花見するひとをみてゐる
未来への河に滴る灰汁の春
軒下に現地集合春の蚊よ
霾のグリエに春闇ジュレ添えて
箱庭にたんぽぽひとつ咲きにけり
春月や高架の下のモンドリアン
雑踏に夜の桜の涼やけき
花曇雀のつがふ螺旋かな
上下左右街を歩かば絵踏かな
春闇に溶けてゆきたるハイソックス
土現る鬼も天使も膏として
理非もなし吾子を守らん春嵐
指の傷いまだ残りて水温む
春光の匂ひをたどる緑かな
死の根っこ掘りかえしたるも花ばかり
海豹や腹を擦りても牙捨てず
山上に蜘蛛の子散りて春疾風
涅槃吹黄色いふうせん西より来
青葉より澄みたる精の飛沫(しぶき)たる
つばくらめ排水管に子を残し
大揚羽地球の端にとまりけり
七色の絵の具溶かして夏の闇
少年が西瓜を抱いて待っている
文学に夏が来れりガルシア=マルケス
修羅場みて胡瓜涼しや絵金祭
麦わらの老婆にふたつ氷菓かな
スタンド・バイ・ミーが真夏をつれてくる
虹の根で跳ねる子見やる日が射した
白物や骸百態夏百夜
夏の砂烟る轍や波高し
瑠璃蜥蜴虹の筆先尻で曳き
コンクリの塀に爪たて蝉の子や
太陽の上に落ちけり田植笠
鰯雲誰も居ぬとびらが閉じる
三日月に暗く膨らむ体育館
魂失せし裁きうつろに鬼灯鳴る
夜歩けば朱き月影たぷたぷと
坂道を下る蜻蛉の高さかな
野分去るパンの耳塩がきいてる
冬鵙や抱き上げし子に脈打てり
切り捨てし大根首に蕾の黄
みすがらに老人を待つ鯨かな
人形よ糸断ち歩め細雪
冬闇に十字切りたる警備員
地の霜をざくざく踏みて役所かな
牡丹雪すずめ垣根にひそみおり
雨宿る鳩の襟元山めぐり
稽古場に天道虫の眠りたる
独楽震え少し迷うて座りこみ
鼻欠けた狛に影揺る初燈
2014-11-02
落選展2014_1 霾のグリエ 赤野四羽_テキスト
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