12 ふらんど さわだかずや
目つむれば風かすかなり花の雨
空いまも紀元前なる桜かな
里といふ名のみ残りて山桜
養花天葬列半ばよりまばら
耳の裏熱き遅日を過ごしけり
歩く足歩く二本の花月夜
城やがて山となりけり笑ひけり
猊下くつろぎて余寒の白湯ひとつ
万物に響きありけり修羅落し
足跡もなく花守は去りにけり
春夕焼文藝上の死は早し
子が板場走り春夜の独り酒
もうすでに花に生まれてゐる頃か
花冷や日誌に潰す虫その他
井月にさくら好きかと尋ねたし
カーテンよりわづかに春の雲拝む
墨東に端唄聞こゆる花三分
韮やはらかし人妻はさりげなし
蝌蚪群れて親を知らざる者ばかり
眠くなる前から眠し春の昼
精神病んで杖つき歩く花ざかり
やい鬱め春あけぼのを知りをるか
螢烏賊地上に住んでゐて不快
花ですから死んでしまつてよいさうです
復職はしますが春の夢ですが
鞦韆のめがけてきたる側頭部
花満ちて故郷は呪ふべき処
入学のひとりは痰を吐いてゐる
女見る目なしさくらは咲けばよし
春昼は春の昼なり嗚呼死にたし
うららかに蟻を潰してゐるあなた
眼鏡からビーム出したしご開帳
一切無常にて蜆汁おかはり
朝寝とは死罪に値する祖国
おーいと呼べば原発やつてくるぞ飛花
春めきて窃盗多き商店街
虚子の忌の回転寿司の皿詰まる
佐保姫がたとへこの方だとしても
下萌や小野妹子はひきこもる
偶然にルイ十六世と青き踏む
草餅の平安朝のつまみ方
芽柳や喫煙権を行使せよ
半裸にてつくしを摘んでゐる集団
メッセージ性なき風船も飛んでをり
地中より花の宴の残り物
霜くすべむかし玉座にありし人
深海の底に棲みたしぎしぎしと
弥生尽陰口が陰満たしけり
劣情を父も持ちけりあたたかし
ふらんどのひとつは父のためにあり
2014-11-02
落選展2014_12 ふらんど さわだかずや_テキスト
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1 comments:
韮やはらかし人妻はさりげなし
韮、いいですね。人妻、いいですね。韮と人妻の取り合わせ、さりげなく。
一切無常にて蜆汁おかはり
諦念の漂う句が多い中、一歩踏み出す力強さを感じる。汁だよ、出汁だよ、味噌だよ。もう一杯!
虚子の忌の回転寿司の皿詰まる
最近は回転ずしもそこそこの味にはなってきたけれど、結局同じようなネタばかり食べるようになって飽きてくる。まったくです。
静かな怒りと諦念が通奏低音として聴こえる。それもまたエネルギーであり力である。
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