2014-11-09

自由律俳句を読む 67 中塚唯人〔1〕 馬場古戸暢



自由律俳句を読む 67  中塚唯人1

馬場古戸暢


中塚唯人(なかつかただと、1949-)は、東京出身の自由律俳人。1993年、父檀急逝のため、中塚一碧楼、檀と続いた自由律俳句誌「海紅」の三代目社主となる。東京自由律俳句会、自由律句のひろば、世界俳句協会に所属するなど、様々な活動を続けている。以下では、数句を選んで鑑賞したい。

春の蛇口からこぼれ出たさくら  中塚唯人

公園の水道の蛇口に、さくらの花びらが詰まっていたのだろうか。あるいは、春という季節の比喩か。陽気な雰囲気が伝わってくる。

ゴギブリの夏にシュッと一吹きしてしまいました  

ゴキブリ退治系の商品の宣伝に用いられそうである。

いいわけみつけられず夏の陽は暮れる  

日暮れるまでいいわけを探していたのだろう。素直に謝るしかない。

きっちり揃えたスリッパにも秋の日暮れる  

誰かの家の廊下の様子を詠んだものとみた。家主の性格は、こういうところにあらわれるものなのである。

銀杏一つ二つと拾い今年もやっぱり三百六十五日  

年の瀬らしい句。閏年が四年に一度あるはずだが、どうにも忘れていってしまう。

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