自由律俳句を読む 67 中塚唯人〔1〕
馬場古戸暢
馬場古戸暢
中塚唯人(なかつかただと、1949-)は、東京出身の自由律俳人。1993年、父檀急逝のため、中塚一碧楼、檀と続いた自由律俳句誌「海紅」の三代目社主となる。東京自由律俳句会、自由律句のひろば、世界俳句協会に所属するなど、様々な活動を続けている。以下では、数句を選んで鑑賞したい。
春の蛇口からこぼれ出たさくら 中塚唯人
公園の水道の蛇口に、さくらの花びらが詰まっていたのだろうか。あるいは、春という季節の比喩か。陽気な雰囲気が伝わってくる。
ゴギブリの夏にシュッと一吹きしてしまいました 同
ゴキブリ退治系の商品の宣伝に用いられそうである。
いいわけみつけられず夏の陽は暮れる 同
日暮れるまでいいわけを探していたのだろう。素直に謝るしかない。
きっちり揃えたスリッパにも秋の日暮れる 同
誰かの家の廊下の様子を詠んだものとみた。家主の性格は、こういうところにあらわれるものなのである。
銀杏一つ二つと拾い今年もやっぱり三百六十五日 同
年の瀬らしい句。閏年が四年に一度あるはずだが、どうにも忘れていってしまう。
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