水のふくれる音 兼信沙也加
大陸へ向かふ飛行機夏兆す
磨ぎ汁のいつしか透けて花は葉に
金魚らに国の名付けて遊びけり
空つぽの古墳吹き抜け青嵐
リラ冷えの書庫にぞろりと聖書かな
夏館出る人のみな白き服
まばたきの多き役者や桜桃忌
黒蜥蜴毛先のいたみ持て余す
千手観音拝みしのちに蛇の殻
明易し胎児の頃の話され
納豆をいつまで練るか日の盛り
砂日傘影閉ぢ込めるごとたたむ
夏帽子電車まつすぐ遠ざかる
赤ん坊の笑ふが如く泉湧く
マネキンのまつげやはらか半夏生
葛切りをすする口より愛語る
抱き上げていつの日か刃を入れるキャベツ
旱星無声映画を借りて見ず
青岬水のふくれる音を聞く
ポケットに切符の冷ゆる晩夏かな
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2014-12-07
2014石田波郷賞落選展 3 兼信沙也加 水のふくれる音 テキスト
Posted by wh at 0:51
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