風の名 下楠絵里
星冴えて秒針の音硬きかな
膝を抱く胸のふくらみ寒牡丹
薄氷や引越の荷を解き終へ
凍ゆるみスプーンの背を舐めにけり
くつきりと紅を引くなり雪の果
朝東風や青きリボンを結びたる
宛先のはらひ大きく燕かな
囀や花束に白多くあり
地球儀に陸の凹凸暮遅し
花冷えの墓真直ぐに並びをり
葉桜や一斉に手の挙がりたる
擦り傷を誇る少年初鰹
薫風や鱗にひかり集まりぬ
夏日向だちやうの首の伸びにけり
炎天のガラスは指を傷つけり
パン生地の薄く伸びたる秋うらら
風の名を教へてもらふ九月尽
頂の大木倒れ火の恋し
終り方知らぬ唄なり刈田道
鰓洗ひ冬夕焼の色を得て
●
2014-12-07
2014石田波郷賞落選展 5 下楠絵里 風の名 テキスト
Posted by wh at 0:47
Labels: 2014石田波郷賞落選展, 下楠絵里
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 comments:
コメントを投稿