水の隅々 田中惣菜
後れ毛を指から逃がす春の夢
間食や何度も燕来て去つて
湖は木を一本も映さず霞む
やはらかきところに春の熊座る
蜂あちらこちらの花に行き着けり
はつなつの小石川薬園に雨
彼一人帰す額の花の通り
青芝や鼻先に触れやうとする
つまさきで扉を開ける雲の峰
滝落ちて水の隅々までわたる
夕顔やきれいに折れた列にゐる
いつまでも大きな魚夾竹桃
犬に声かけて返事のなき晩夏
半分の西瓜は皿に伏せてあり
八月の終り自転車二人乗り
蜉蝣と壁の間をすり抜ける
鰡飛び止む雨の帰り道に迷ふ
水澄みて足元に近づいてくる
藤の実や毎日を縫ふやうに会ふ
水星や小石あつめて秋の色
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2014-12-07
2014石田波郷賞落選展 7 田中惣菜 水の隅々 テキスト
Posted by wh at 0:43
Labels: 2014石田波郷賞落選展, 田中惣菜
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