採血の痕 寺田 人
春の風邪隻眼の魚捌かるる
麗らかや窓一枚に街一つ
羅針盤狂へり春の海は闇
梅の香の臥せたる少女包みけり
薄氷を余さずに割り歩きをり
風船に昨日の呼気を閉ぢ込むる
夏立つや胸軋むほど声を上げ
薫風の騎士の鎧の隙間へと
新緑の島を統べたる大鳥居
命日や百合より滴落ちさうに
数百の文隠したる夏館
月明かり眠りを知らぬ天道虫
日の出づる音蓄ふる朝の露
賞状に丸めし跡や虫の声
隣家より第九聞こゆる星月夜
満月に駆くる双子の手の繋ぐ
厳冬の浴槽狭くなりにけり
北極星冷えぬ一人の道はなほ
冬ざれや採血の痕重なりぬ
公園の声の丸ごと凍りけり
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2014-12-07
2014石田波郷賞落選展 9 寺田人 採血の痕 テキスト
Posted by wh at 0:39
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