2015-03-29

自由律俳句を読む 86 安斉桜磈子〔2〕 馬場古戸暢

自由律俳句を読む 86
安斉桜磈子〔2

馬場古戸暢





前回に引き続き、安斉桜磈子句を鑑賞する。

馬場古戸暢

家のあるじとして坐り夕づゝの見ゆるなり  安斉桜磈子

「夕づゝ」は、宵の明星のことを指すという。縁側に座って金星を見ている様は、なるほど、確かに家のあるじのようである。よくは知らないが。

暗い一室があって春の日を戻らねばならぬ  同

自身がどこにいるのか、いまいちわかりがたい句。室内にいて、春の日が射し込む廊下にいるのだろうか。そうであれば、小学生の時分を思い出す。学校の廊下の奥の暗い一室が、やけに怖かったのである。

草餅たべ空にいつまでも寺の屋根  同

境内でのんびりと草餅をたべているところだろう。空は青空、季節は春がよい。桜磈子が見た寺の屋根は、今でも空にそびえているのだろうか。

日暮の寒さがそばへきて糸くず拾うてゐる  同

室内の方が、日暮の寒さを感じやすいように思う。静かな日常のひとこまが、よく詠みこまれている。

氷柱さやぎ落つるわが死ぬ家ぞ  同

自身がこの家に根付いていることを実感した後に、はじめて詠むことができる句。北に生きる人らしい句とも言えるだろう。

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