【俳人インタビュー】大塚凱さんへの10の質問

【俳人インタビュー】
大塚凱さんへの10の質問

質問：西原天気

Q1　今週、何句作りましたか？

20句くらいですかね。今週は読みたい本を読むことに時間を割いたので、少なめです。

Q2　俳句に似ているものといえば？

蔦。基本的に怖い。

Q3　今朝、起きてから2～3時間の行動をできるだけ詳しく（公表できる範囲で）教えてください。

時系列だと以下の通りです。
・ベッドの上でしばらくタオルの端をいじる（Q5参照）
・着ている下着を全て洗濯機にぶちこんで、新しい下着の上に洋服を着る（色は青と緑で揃える）
・手を洗う
・歯を磨く
・髭を剃る
・高橋源一郎の著書を読んでいる最中に寝落ちしてしまったので、その続きを読破する
・バターを塗り込めた食パンと、表面がやや乾いたレタス、炒めたウィンナー（ケチャップと粒マスタード）、牛乳、ブラックコーヒーを摂取する
・テレビに巨人軍の選手がたくさん出ていて朝からイラッとする
・昨日の通り魔事件のニュースを見て、その発生時に近くを歩いていたことを知る
・もう一度歯を磨く
・整髪する
・家を出たが、靴が服と合っていない気がしたので引き返して靴を交換する
・駅までの途中にあるドラッグストアでコカ・コーラゼロを購入する
・川柳を2句作り、フォロー・フォロワー0人のTwitter鍵アカウントに流して記録する
・負傷したパレスチナ人を助けようとする救助員にイスラエル軍兵士が暴行する動画を視聴する
・俳句を3句作る
・この質問に答えはじめる

Q4　現在お住まいの町は、どんなところですか？

先祖代々の土地なので、大塚姓が多いです。僕の小さい頃ですらまだ、墓碑が大塚ばかりでした。ここ3~40年で宅地開発が行われて''移民''がだいぶ増え、最近は肩身が狭いです。東京からずーっと続いて隣駅までは京浜工業地帯の風景なのですが、そこから急に雑木林の山に入り、春は畦を焼く煙のなかを走り抜け、5分ほどすると景色が拓けて僕の町になります。真夏の夕方には、遠くから赤潮の匂いがするところです。震災の際には、雷のような轟音を立てながらコンビナートが爆発するさまを自宅の二階から眺めていました。そのことは、たった一日二日のことだったにもかかわらず、どうしても網膜と鼓膜に灼きついていて、この町を語るときには思い出してしまいます。

Q5　触り心地が好きなものってありますか？

タオルの端にある、布の折り返しの縫製部分です。ここをてのひらや指先でコネコネすると、玉が生まれるんですね。指しゃぶりしていた頃から、ずーっとそれをいじってしまう癖が抜けません。居酒屋のおしぼりでも同様です。句会の二次会もたけなわになると、喋りながらコネコネしているのが観察できるはずです。

Q6　どういうわけか、雄鶏を一羽飼うことになりました。名前を付けてください。

「グリル」かなあ。チキンのグリル。音感からもオスっぽいですし、飼っているハリネズミの名前が「ぐり太郎」なので。

Q7　10年後は何をしていると思いますか？　どんな状態でいたいですか？

とにかく暇が嫌いなので、「暇だなぁ」と思う瞬間のない生活を送っているとは思います。できれば、オリエンタリズムではない文脈で、2年くらいかけて大陸を渡り歩きたい。手段は問わないのですが、地球を感じたいのだと思います。

Q8　目が覚めました。何十時間も眠ってしまったらしく、おなかがぺこぺこです。何を食べますか。

鍋です。野菜庫からありたけの葉物を取り出して、ひたすら刻みます。ごま油で豚挽肉を炒めたのち「エバラ坦々ゴマ鍋の素（原液:水＝1:2）」を注ぎこみ、葉物と、えのきだけ、油揚げ、そしてありったけのもやしを入れて、ひと煮立ちさせます。そうして豚バラ肉を泳がせながら、白菜と長葱ともやしを補充しつつ、無限かと錯覚するほどに食べ続けたい。シメは中華麺（ちぢれ細麺・茹で時間1分）にごま油を垂らしていただこうと思います。

　

Q9　好きな自然現象について、教えてください。

地震かなぁ。睡眠中に地震を感じ取るときのあの「……来るッ!!｣っていう感覚がたまらないです。興奮しますね。そのあとゆっくりと身を委ねながら｢大地が揺れているッ……!!」感を味わうのも、地球に抱かれている心地がして……やっぱり僕は地球を感じたいのだと思います。

Q10　ここ最近でいちばん笑ったことを教えてください。

「ぐり太郎」が実はメスだったと発覚したこと。

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大塚凱　近作自選十句

http://vovinam.jp/about

葛まるでマスターフゴの息遣ひ

紅葉かつ散りゆく朝を試し斬り

ぼびなむが遠いカンナを打ち落とす

黄落は道着を脱ぐと映りさう

映りこむ鈴に紅葉のありあまる

桐の実やひびいてやまぬ顎の骨

斬り終へたさびしさを鷹渡ること

虫交るマスターフゴを遠巻きに

マスターでないフゴもゐる霧の奥

草の絮ぼびなむぼびなむとほろびる