2018-06-10

【週俳5月の俳句を読む】父の日なんていつだか知らねえやい 山崎志夏生

【週俳5月の俳句を読む】
父の日なんていつだか知らねえやい

山崎志夏生


落椿重なり浅川マキ歌ふ  小山森生

読者の世代を限定してしまうかもしれないが普遍性はある。浅川マキをもってきただけで句に夜が濃密に流れ込んでくる。落椿が積まれた暗い夜にどんな歌を口遊むのか。「朝日楼」あたりだろうか。読者それぞれ違う歌を思い浮かべるのもいいな。

浮氣女のやうに葉櫻の下をゆく  小山森生

浮氣女とは、やっぱり浅川マキの「かもめ」にでてくるようなドアを開けたまま着替えをして男の眼を引くような・・とモーソーしてしまう。満開の花の下ではなく葉桜の下ってえことでベタでない句として成立している。

阮(グェン)さんが舌を出すから五月晴  小山森生

読み方からするとベトナムの人か。善良で温厚で面従腹背のしたたかさもありそうな阮さんがペロっと舌を出していることが因で五月晴が果であるというつなげ方は意味がありすぎてスキキライが分かれそうだが、立ち上がってくる可笑しみがサラッとしていて私は嫌いではない。

山宿は二階が良けれ夕河鹿  広渡敬雄

なぜ二階がいいのかを広渡さんに尋ねようものならウンチクがながくなりそうだが理由はどうあれ山宿の二階は気持ちがよさそうだ。夕河鹿の声に一日の疲れが消えていくんだろうなあ。山頂までロープウェイで行きたい自分には得ることのできない時間。

指先に蝶お尻には蒙古斑  藤田亜未

自分にあったかどうか思い出せないが銭湯で他所の子の尻が青いのをみたような気がする。自分の子のこともよく思い出せない。オムツのCMにでてくるような子にもない。リアル蒙古斑は何十年も見てない。この句は春野で母と二人でいる子の丸裸の光景か。ファンタジーっぽくてで可愛い。浅川マキとは真逆な世界観。こういう句の前にはひれ伏すしかない。

父の日やビニールハウス蒼く暮れ  川嶋一美

父の日は季語としても日常語としても母の日にアットー的に分が悪い。父親は自分が生んでないんだから仕方がない。DNA鑑定なんかがあろうが、どこまでいっても、(多分父)という存在以上にはならない。ビニールハウスが蒼く暮れていく光景はそんな父への距離感と愛を詠む道具立てとしてなんとも言えない良さがある、蒼くという言葉には敬意や同情やその他がブレンドされた善意がこめられている。父はウレシイよ。



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広渡敬雄 雪渓 10句 ≫読む
川嶋一美 蒼く 10句 ≫読む


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