10句作品テキスト 広渡敬雄 竜の玉

　　竜の玉 　　　広渡敬雄

啄みてかほの小さしななかまど
東京は西に山なす新酒かな
みづならは綿虫の来る淋しい木
むつかしきかほは犬にも竜の玉
一本の杭の抜かるる枯野かな
山なりに雲の流るる大晦日
羚羊の眼に宿る深き冬
恋の猫切り火のごとく消えにけり
ナース帽ふたつ桜餅みつつ
春の雲弓はしづかに弱りけり

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