2009-10-11

〔今週の haiku mp:動画〕シューティングゲーム(クラシック)

〔今週の haiku mp:動画〕
シューティングゲーム(クラシック)  compiled by tenki  ≫動画ページ


むかしむかし、ゲームセンターにテレビゲームがあったか、なかったか、あったとしてもブロック崩し程度のプリミティブな様相のゲームだけが、けれども結構な人気で、コンパクトな筐体にたくさんの子どもやおとなを集めていて、その頃のゲームセンターのどこをどう見ても、デジタルな要素もサイバーな要素も皆無。きほん、モノが動く、アナログな世界。壁のひとつを埋めたピンボールも、電気仕掛けではあるものの、ボールというブツが動くわけだし。

シューティングゲームという呼び方はまだなかったが、いま思い出してみると、最初に体験したのは、「潜水艦の魚雷」ゲームともいうべきもので、「望遠鏡」様のものを覗くと、ビデオ画面には沖遙か波間に「敵」の各種戦艦が浮いている。それをスイッチを押せば発射される魚雷でもって撃沈するといった態で、まるで暗箱カメラのような昔懐かしい感触がある。それだって、ヴィデオゲームには違いなかったのだが。

国分寺パークレーン。とっくに潰れてなくなったボウリング場の片隅にゲーム機が並べられ、僕らは、たいていはボウリングのあと、運動後のクールダウンのような感じで、テレビゲームやピンボールを遊んだ。

時間をうまく正確に再構成できず(記憶は曖昧)、ゲームに詳しくもないので、心許ない話になるが、あるとき、国分寺パークレーンのゲームコーナーに、見るからにアメリカ製(だって表示がすべて英語だった、たしか)といった筐体が現れた。そのシューティングゲームは、宇宙が舞台。モノトーンの画面(つまり漆黒の宇宙)に宇宙船が浮かび、彼方から飛来する敵の宇宙船を撃墜する。宇宙船が何本かの白い線分で構成されるそのデザインは卓抜で、ただただ美しかった。とりわけ爆破されるとき、線分がパラパラとほぐれるように拡散していく、そのさまはリアル(もちろんのこと、想像上のリアル)から程遠いが、ともかく美しい。

ゲーム名など覚えていない。すこし、例によってgoogleやYouTubeで探索してみたが、何というゲームだか調べがつかない。誰かご存じないか。1970年代末か、その頃の機械である。

さて、やがて、といっても短期間のことである、あっという間に、シューティングゲームはカラーになり、なにやらビットだか知らないが、機能向上、動作複雑化、ゲームセンターのアーケードゲームから、家庭へパソコンへ携帯電話へと広がった。その歴史のなかで(と、こう書くと、ゲームに詳しい人みたいだが、そうではない。文章上の成り行きなので、あしからず)、まず「ゼビウス」は挙げていいと思う。

クラシックと銘打った今回の動画特集、実は新しいゲームをまるっきり知らないからなのだが(もう20年以上ゲームやってません)、「ゼビウス」は、ナムコから1983年2月に発表されたアーケードゲーム。ジャンルは「縦スクロールのシューティングゲーム」とWikipediaにある。

このゼビウス、まあ、その、なんというか、画面が美しかった。いま見ると、「あらま、粗い画面だこと!」と拍子抜けするが、当時はたしかに美しいと感じたのだ。ゲーム手順、すなわち敵機を撃ちながら地上の敵基地に爆弾を落とすというマルチタスクも新鮮で、大いに流行った。その流行のさなか、『現代思想』1984年6月号に掲載されたのが、中沢新一「ゲームフリークはバグと戯れる」だった。1970年代後半あたりに始まったニューアカデミズム・ブームの後期、あるいは終末期、そんな時代。テレビゲームがまだ家庭ではなく「外」にあった頃のお話。

データ等ネットから拾って書いているが、この論考、読み返すことはしていない。うろ覚えで言うと、ゲームの作り上げる設定に「世界観」といった大袈裟でイヤらしい呼称を用い始めたのは、この頃かもしれない(実際、ゼビウスの場面展開は、その後ゲームにおいてめずらしくもなくなった「物語世界」だったわけだが)。記事タイトルに「バグ」とあるように、「撃つ」というメインのゲーム性とは別に、プログラム上のバグを見つける愉しみが加わった「新しいゲーム」と捉えていた。

ひたすらシューティングという行為であれば、それは労働の色合いを帯びる。シューティングという主題からの逸脱にこそ遊戯がある。そうした当時の文化流行のスキーム(資本主義とそのカウンター、規範と変奏、逃走etc:笑)に、ゼビウスの「世界」は、むりくりか自然にか、みごとに合致した。

当時のオシャレ(でもないか)な学生は、立ち読みでか、友だちに借りてか、自分で買ってかは知らないが、『現代思想』の中沢新一論考を読み、ゼビウスを遊んだ。バグと戯れた、というよりは、有り余る時間と戯れた。というより、むしろ、厖大に広がるかのような無為の時間と、もがきながら格闘したといったほうがいいか。

1984年は、オーウェル『1984』と符合するが、それでどうといった出来事はなかった。調べてみると、ドラゴンボール(鳥山明)が『週刊少年ジャンプ』で連載開始。映画は「風の谷のナウシカ」やら「ターミネーター」、洋楽ではマイケル・ジャクソンのアルバム「スリラー」が年間売上第1位。歌謡曲ではチェッカーズがヒットした。そんな年。

なお、インベーダーゲーム(タイトーのスペースインベーダー)の登場はその6年前、1978年。日本中で百円玉が足りなくなり急遽鋳造という嘘のような冗談のような大ブームだった。


1) ゼビウス Xevious 日月火予定

2) グラディウス Gradius 水木予定

3) SPACE INVADERS INFINITY GENE 金土予定

3 comments:

K-To さんのコメント...

具体的なタイトルまではわかりませんが、
「1970年代末」「線分」というキーワードからすると
「ベクタースキャン」という描画方式を使ったゲームだと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=0lIzugbsCMk
http://www.youtube.com/watch?v=D02sbVXCVsw
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3

tenki さんのコメント...

K-To さん
ご親切にほんとうにありがとうございます。
近いですが、ちょっと違いました。

それで、いただいた情報を元にちょっと探してみました。
ちょっと手間取りましたが、ありました!

http://www.youtube.com/watch?v=X58CdkLVr6A
この1分10秒あたりから流れるSpacewarというゲームです。

1970年代末と書きましたが、記憶違いで、もっと前かもしれません。
あるいは中古品が、その頃、パークレーンに導入されたのか。

思い出の中では、もっと大きな宇宙船だったのに、小さいですね。
でも、爆発後の「線分」のほぐれかた、これ! これです。

ヴィデオゲーム(アーケード)の黎明期のもののようですね。

これでもたさくさんのブロック崩しのなかで異彩を放っていました。

コメントしていただいたおかげで、とりあえず動画にたどり着けました。
改めてありがとうございます。



副産物として、懐かしい別のゲームを発見することもできました。

潜水艦ゲームです。
Depthcharge [1977]
http://www.youtube.com/watch?v=ZfBE8e2Xhoc

これはよくやりました。

いずれにしても、モノクロで、いったいいつの時代だ?という感じですね。

K-To さんのコメント...

Spacewar ですか!
ほんとに最初期のゲームですね。
Steven Levy の「ハッカーズ」に開発の背景などが載っていたのですが動いてるのははじめて見ました。
http://www.amazon.co.jp/dp/487593100X
こちらも勉強になりました。ありがとうございます。

潜水艦ゲームだと個人的にはこっちです。
学生の頃やたら流行ってました。
http://bio100.jp/game_review/game01.html