2010-09-05

総合誌ビジネス 『俳句界』2010年9月号を読む 五十嵐秀彦

【俳誌を読む】
総合誌ビジネス
『俳句界』2010年9月号を読む

五十嵐秀彦


「特集 敬老の日記念 俳句で130歳まで長生き!」 p50-

こういう企画は確信犯なので、批判するだけ馬鹿を見る。
『俳句界』は凡庸な企画の合間にときどき面白い企画を入れるが、そこから想像するに、やはり凡庸陳腐な企画ほど売上が伸びるのであろう。
商業誌なので、儲けないことにはしようがない。

ということは、この企画は売上に貢献するという根拠があるということだ。
でも私が80,90になるまで万一生きながらえたとして、はたしてこの企画で買ってみようと思うのだろうか。
まあ、そのトシになってみなければわからぬことだが。

昔、地域の高齢者健康活動を研究している医師たちの会議に同席したことがある。
ある農村のさまざまな取り組みと、そのイベントに継続参加している老人たちの医療費が「有意に低い」という発表があり、そりゃ、健康だから参加できるのであって、そういう人は医療費が少ないのが当然で、参加しているから健康なんじゃないだろ!、というツッコミが他の医師から一斉に出てしまい、思わず失笑したことを思い出した。

俳句をやっていれば長生きできるなんてはずもなく、たまたま長生きしているから俳句をやってみようと思っている人がいるだけのことだ。

あほらしいことである。

そんなことを考える暇があるなら、面白い俳句をひとつでも多く作りましょう、皆さん。

特集については、もうそれ以上言うことはないので、他の記事を探す。


「佐高信の甘口でコンニチハ! ゲスト:津村節子」 p135-

津村節子。言うまでもなく、作家吉村昭の奥さんで、ご自身も小説家。
先日、吉村昭の句集『炎天』を読んだばかりだったので、興味ひかれた。

吉村がいつごろから句会をしていたのかという質問に、
尾崎放哉を扱った作品『海も暮れきる』(講談社)を書いた後くらいでしょうか
と答えているのを読み、そのことが気になっていたので、いいことを教えてもらった。

彼女が吉村と出会ったのも学習院の岩田九郎教授の「おくのほそ道」講義が縁だったという。
吉村昭と俳句とはやはり深い縁があったことを、津村の発言からあらためて教えられた。

その彼が、なぜ尾崎放哉を選んだのか、このインタビューを読んでも、やはりそのことが気になるのであった。

 今日もまた 桜の中の遅刻なか    吉村昭


佐藤文香 「バプテスマ/ハフレウス」10句 p48-

  紙に菊 忘れた 君か誰か立つ

  萎えた朝顔ピアスの血ピアノのア

  塩素の水へ光は夏の意味で、まだ

彼女はどんどんややこしい道に入っていくようだけど、実作者の目から見ると胸苦しくなる思いがあるが、読者の立場から素直に読めば、面白くてたまらぬ魅力がある。
こういう句をもっと読みたくなった。


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