井月がじわじわ気になりはじめた人のための、
おせっかいブックガイド・10冊
相子智恵
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「井月って"いげつ"じゃなくて"せいげつ"って読むのね」ということがわかって、もう少し井月を知りたくなってきたら、こんな本はいかがでしょう?井月の本は絶版が多いのですが、今買えるものから勝手にセレクトしてみました。
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№1 [漫画]
『無能の人・日の戯れ』(新潮文庫)
つげ 義春(著)
まずはこの名作漫画から。「無能の人」最終話「蒸発」に井月が出てきます。この漫画を読んでも、決して石屋になってはいけませんよ…。
№2 [小説]
『井上井月伝説 (人間ドキュメント)』(河出書房新社)
江宮 隆之(著)
これは一気に読めて面白い、井月の一生を描いた歴史小説です。芥川龍之介と下島空谷の会話が呼び水となる構成で、物語にぐんぐん引き込まれます。
№3 [エッセー]
『何処やらに、井上井月―伊那の放浪乞食俳人』(河出書房新社)
瓜生 卓造(著)
1982年に牧羊社から出版されたエッセー集『漂鳥のうた』が、29年ぶりに新装版で刊行。ふらんす堂の山岡さん、邑書林の牙城さん、石幹太さんなどが当時の編集に携わったそうで、みな井月の取材に同行して伊那に行ったらしい。そんな時代があったのですね。
№4 [評論]
『子規は何を葬ったのか―空白の俳句史百年』(新潮選書)
今泉 恂之介(著)
昨年、話題になった評論集です。ここで井月は「子規に葬られた側」として出てきます。この頃の俳壇事情がよくわかり、旧派にも興味がわきますよ。
№5 [俳句鑑賞]
『井月の魅力―その俳句鑑賞―』(井上井月顕彰会)
竹入 弘元(著)
井月の俳句ってどんな句があるの?と思ったら、こちらがおすすめ。四季別で一句ずつ鑑賞が付いているので、とても読みやすいです。
購入先はこちら↓
http://www.seigetsu.org/index.php?f=&ci=13436&i=13609
№.6 [ガイドブック]
『井上井月と伊那路をあるく: 漂泊の俳人ほかいびとの世界』(彩流社)
井上井月顕彰会(監修)、北村皆雄・竹入 弘元(編著)
映画「ほかいびと」を見るなら、この本がパンフレットがわりになります。映画のロケ日記から、主演の田中泯さんのインタビューまで。写真も美しいです。映画公開中はポレポレ東中野でも買えます。
№.7 [研究書]
『井上井月研究』(彩流社)
中井 三好(著)
「かつて作家・石川淳が貼った「井月は全国行脚もせず、俳諧漂泊者気取りだ」という言われなきレッテルの嘘を暴く」という煽り文句に勢いがある、昨年出た井月研究評論の大冊。まさに足で調べた労作です。ただ一部、反論を書きたくなるところも。井月評論が広がる予感の一冊。
№.8 [評論]
『信州二人の放浪俳人 一茶と井月 ― 一茶の我執・井月の失意』(ほおずき書籍)
春日愚良子(著)
一茶と井月という信州ならではの比較評論です。一茶には「目出度さもちう位なりおらが春」という有名句がありますが、井月には「目出度さも人任せなり旅の春」という句があるんですよ。ちなみに一茶が65歳で死んだとき、井月は5歳でした。
№.9 [関連本]
『『井月全集』編者・高津才次郎奮戦記』(ほおずき書籍)
信州井月会(編著)
高津才次郎がどうやって散逸していた井月の句を集めたのか。NHKの「プロジェクトX」みたいな本です。地方紙で問いかけたら地元読者がそれに反応して、虫食い状態だった井月の句の下五が判明するなど、現代のWEBのような、当時の新聞の双方向性も面白い。
購入先はこちら↓
http://www.hoozuki.co.jp/__takatuhunnsennki.php
№.10 [全集]
『漂泊俳人 井月全集』第四版(井上井月顕彰会)
ここまできたら、井月の世界にどっぷり浸りたい!という方は、いよいよ全集へ手を伸ばしてみてください。まさかの限定400部(!)なので、早い者勝ちです。
購入先はこちら↓
http://www.seigetsu.org/index.php?f=&ci=13436&i=14211
番外 [俳諧集]
3/23発売『井月編「俳諧三部集 ―越後獅子・家づと集・余波の水くき―』(井上井月顕彰会刊)
竹入弘元(解読)2,800円+税、限定800部
ついに私がほしかった俳諧集が出ます。全集でもこのあたりが抜けているんです…。
井月名句100選、井上井月概説、年表付きだそう。ここまでくるとマニア度高め。
まだ発売前なので、お問い合わせはたぶんこちら↓
http://www.seigetsu.org/
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