自由律俳句を読む38
宇佐美不喚洞
馬場古戸暢
宇佐美不喚洞(うさみふかんどう、1877-1939)は、碧梧桐の指導を受け、一碧楼に傾倒したことで知られる。石川県に生まれ、のちに北海道へ移った。以下『自由律俳句作品史』(永田書房、1979)より、数句を選んで鑑賞したい。
まぎれなきこと師走であつたり女夫であつたり 不喚洞
年の瀬の忙しさとともに、夫婦であることを確かめ合ったのだろう。幸せな句だと思う。
晴れわたる桐の木が木のぼうず茶の花咲いた 同
状況を理解しがたい句だが、雰囲気でとった。最近になってはじめて、茶の花が白いことを知った。
けふの日がさし妻や芭蕉枯るゝや 同
芭蕉を実際に見たことは未だないが、なかなかに大きいようだ。それが枯れているとは、見た目にも淋しい。妻は何と答えたのだろう。
誰が先へ死ぬるであらう枇杷の木はな咲き 同
この枇杷は、庭の木とみた。縁側でこんな話をしている最中に、皆の目に枇杷の花が咲いている様子が入ってきたのだろう。
それは遠いことの卯の花くたし若い所帯のころ 同
意識したとったわけではないが、今回の不喚洞句には植物を詠んだものが多い。北海道の自然豊かなところで暮らしたがためか。最初の「それは遠いことの」あたりに、民謡のような雰囲気を感じる。
2014-04-06
自由律俳句を読む38 宇佐美不喚洞 馬場古戸暢
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