【週俳8月の俳句を読む】
風を受けとめて
梅津志保
寝苦しき一夜の明けて蓮の花 遠藤千鶴羽
スーパーひたちに乗り、ビル群の東京を抜け、茨城に入った所で蓮の畑が一斉に広がっていた風景は、私の今年の夏の思い出だ。
暑さから解き放たれた瞬間。
なぜか蓮の花の前では、姿勢を正してしまう自分がいる。
海の挽歌拒むジュゴンの打楽器 豊里友行
アメリカの博物館では「地上で最も凶暴な動物」として鏡が置かれ人間を映し出すということを聞いてから、ずっとその通りだと思っていた。
ジュゴンの優しい目を人間は見つめ返すことが今できるだろうか。
打楽器を鳴らそう、声をあげなければ。
白鳥や風のかたまりひとつ去る 佐藤文香
風のかたまりは、白鳥の大きさ。ひとつ、またひとつ白鳥が去って行く。風を抱えて。
向かうその空はきっと青空。
私の心の風もひとつ去り、晴れやかな気持ちになる。
名をしらぬ犬と吹かれてゐる風に 小津夜景
隣り合わせた犬と風に吹かれる。そこに来る運命であったのだと思う。
その瞬間をただの偶然と思うか、必然と思うか。
必然と思った時から、豊かな時間が私の中に流れ出す。
第380号2014年8月3日
■宮崎斗士 雲選ぶ 10句 ≫読む
第381号2014年8月10日
■遠藤千鶴羽 ビーナス 10句 ≫読む
■豊里友行 辺野古 10句 ≫読む
第382号 2014年8月17日
■佐藤文香 淋しくなく描く 50句 ≫読む
第384号 2014年8月31日
■竹内宗一郎 椅子が足りぬ 10句 ≫読む
■司ぼたん 幽靈門 於哲学堂 10句 ≫読む
■江渡華子 花野 10句 ≫読む
■小津夜景 絵葉書の片すみに 10句 ≫読む
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