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8. 背に 吉川創揮
沈丁や夜雨の耳に籠りたる
三階の窓より落つるしゃぼん玉
立てば海見ゆる教室ヒヤシンス
囀りの方に湖ありぬべし
明るみに靴脱がれある草苺
ホースより出る水熱し麦の秋
雲を背に雲の流るる夏野かな
網戸洗ふ目のすみずみに水を張り
蝉穴の呼吸に濡れておりにけり
蛍火や空より山の夜深し
舌先の力に桃のほどけけり
マンホールを水の流れや夜半の秋
眼奥に冷えを結びて黙祷す
雨垂れの音の尖りや秋時雨
朝寒や水拭きの跡しるき窓
だらしなき布団の干し方でありぬ
ビラ配るサンタの銀の指輪かな
冬蠅の鏡に縋りゐたるなり
時計なき部屋の昼間や毛糸編む
口元のにきび痛めり初笑ひ
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