歌仙「水の春」始末記
捌き:佐山哲郎
連衆:トオイダイスケ、宮﨑莉々香、堀下翔、大塚凱、佐藤りえ、福田若之、生駒大祐、西原天気
発句 十代はときめく日々や水の春 ダイスケ
脇 風吹き抜ける岸の藤棚 哲郎
第三 エンジンの音が雲雀を打ちあげて 若之
ペットボトルをおかねにかへる 莉々香
月 熊笹に出でしなの月結ぶ頃 下翔
秋意は紐で出来てゐるらし 天気
初折裏 ぎんなんがシュレディンガーの猫である 若之
恋 爪ぴかぴかにされたるをとこ ダイスケ
恋 髪に触れひかりの匂ひとも思ふ 大祐
厠の裏ににはとりの棲む 凱
チャイムはや飛び出してくる児童たち ダイスケ
顔面セーフだけど痛いよ 若之
夏の月 涼しくて月から鏡までの距離 凱
ほたるが散つてわからなくなる 莉々香
小石川庭園地下の断面図 りえ
糸井重里たちが見る夢 若之
花 花吹雪からてのひらが子をさらふ 凱
はつらつと逝く春にてあれな 翔
名残表 それぞれに祈りつづけてゐる薊 莉々香
思ひ出すべてダムに沈める 大祐
ともだちと死体ごつこを暮れるまで 凱
団地の中に公園ふたつ 翔
恋 人妻と菊名でつくる雪だるま 莉々香
恋 プラットフォームの赤いセーター ダイスケ+天気
呼ぶ声も呼ばるる声も飴のやう りえ
山彦どもが灯す隧道 若之
ネパールの仏像の鼻欠けてゐて 大祐+天気
ゑんどう蒔くを民の千年 凱
月 月を見る翁※月を見ぬ媼 ダイスケ ※休符記号
能舞台とは萩の闌けたる 翔
名残裏 清水に一面の秋惜しみをり 若之
豆腐小僧とすれ違ふ坂 りえ
十字路を行く草原を行く如く 大祐
たてがみ越しに透けるきさらぎ 凱
花 窓に見て橋の向うの花盛り 莉々香
挙句 図鑑に飽きて吹く石鹸玉 大祐
起首:2017年4月16日 13:00
満尾:2017年4月16日 17:00
【解題】
オフ会・昼間興行の連句(お知らせ記事≫こちら)、顔ぶれがわからないまま、は4月16日(日)13:00、蓋を開けてみると、錚々たる若手が集まり、スタート。
捌きは佐山哲郎さん。私・天気は捌きの手伝い(書記etc)と賑やかし(アホなことを言って、連衆の肩をほぐす)。
途中、佐藤りえさんが加わり、佳境へ。
ところで連句の進め方には大きく「膝送り」と「出勝(でがち)」があります。「膝送り」は連衆に順序が決まっている。次の付句は誰々、といういわば指名制。「出勝」はひとつの位置に連衆(全員)が付句を出し、良いものを捌きが選ぶ(詳しくはググってください)。今回は、スピード重視で「出勝」の変則型。数人から数句出て、いいのがあれば付句とする。付句に採用された人は2回休み。
連句は意外に時間がかかります。スピード重視のスタイルを採ったものの、この日、4時間では、「きっと巻き終わらないだろう」と思っていましたが、途中、進捗状況と時計の針を見て、「ひょっとしたら満尾するのでは」と、捌き助手の期待がふくらみました。果たして、終了時刻の17:00まで少し時間を余して、めでたく満尾。
おめでとうございます。ぱちぱちぱちぱち。
捌き・哲郎さんの手腕もさることながら、連衆がナイス。なおかつ、終始和気藹々で、なかなかに良い雰囲気。
個人的見解としては、《ペットボトルをおかねにかへる 莉々香》で勢いがつき、連衆のカラダがほぐれた感。
署名箇所に「+」とあるのは共作。この句に限らず、皆で智恵を出し合った句もあります(連句は、「作者」「個人」といった近代概念以前の遊び)。
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