2017落選展を読む
8.「杉原祐之 上堂は難し」
上田信治
杉原祐之 「上堂は難し」 ≫読む
もう、おなじみというか、この路線のベテランというか。
この人の「写生」は、歳時記の中の言葉を、非価値的に、日常意識のなかに配置する。そんなふうにして、季題を(手の中にあるカードを示すようにして)だれか他の人にちらっと見せるという、ささやかな挨拶。
そこに、挨拶をされれば悪い気はしない、というささやかな価値が生まれる。
どぼどぼと溢れてゐたる若井かな
結納の席に獅子舞踊り込む
どうでもいいわけである。うそだと思うし。
ラーメン屋の湯気もうもうと寒に入る
どうでもよすぎて、おどろく。どうして、こう書こうと思ったのだろう。
雛段を支ふるビールケースかな
プールより上り海鮮丼喰らふ
作者が面白がっていることは、句の深さやひろがりにおいてはマイナスだけれど、もうあまり若くはないサラリーマン(という古風なことばが似合いそうな)男性が、いわば「ユーモア」の人であることは、いやなかんじはしない。
炊飯器より豆飯の湯気と音
踏切を待ちゐる山車の囃子急
豆飯の音というものがあるかどうかは知らない。いつもよりしゅぶしゅぶいうのだろうか。交通規則にしたがって止まっている山車の、お囃子がもりあがるところに差し掛かるのは面白い(踏切と書いてしまうところが、作者のユーモアの人たるところだ)。
雉鳴くや足湯に村を見晴らして
この「村」は好きでした。近年どこにでもある「足湯」という施設を使いつつ、観光客気分で言ってるでしょう。その気分の距離感みたいなものが、正確に書かれている。
2017角川俳句賞「落選展」
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2018-04-01
2017落選展を読む 8.「杉原祐之 上堂は難し」 上田信治
Posted by wh at 0:40
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1 comments:
上田信治さま
落選展50句お読み下さり有難うございます。
自分では季題の価値を最大限尊重して、季題から起こる感興を重視して句を詠んでいるつもりですが、そっけなく扱っているように思えるのは面白かったです。
詠み方はずっと変えていないので、マンネリといえばマンネリかと思います。
御礼が遅くなりましたが有難うございました。
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