2020-02-16

【俳句関連書を読む】句と句、自由につながる 三島ゆかり・中山奈々『フリーしりとり 二句二円』 西原天気

【俳句関連書を読む】
句と句、自由につながる
三島ゆかり・中山奈々フリーしりとり 二句二円

西原天気


三島ゆかり・中山奈々『フリーしりとり 二句二円』はB6判・全104ページに1000句が並ぶ。あとがき(三島ゆかり)によれば、両氏が交互に句を投げ合う、いわば句の掛け合いのようなものは2016年2月にツイッターで偶発的に始まった。以後、2018年3月まで断続、両氏500句ずつ1000句に至ったところで、この本が編まれた。つまり、自選などは施されていない模様。

「しりとり」と銘打つものの、下の句を受けて、といったルールはなく、前句とのつながりは自由自在。それゆえ「フリー」と冠されているのだろう。

例えば、

スマホ見るひとの行列薄暑光  ゆかり

から、

まほろばにマルコ・ポーロや夏はじめ  奈々

は「まほ」の音でつながる。

そこから、

茉莉花や裏に穴ある丸ぼうろ  ゆかり

は、音は音だが、すこし凝っている。マルコ・ポーロ→丸ぼうろ。



さらに、

うろ覚えなる枝豆のみどりかな  奈々

は、「穴」から「うろ」へとつながる。しりとりと言いつつ、連句の要素も含まれるようだ。

一句一句を味わう(句集や連作のように)のとは別に、句の《つながり方》が楽しめる。その意味では、どのページを開いてもよさそう。1000句はいかにも膨大だが、どこから読み始めてもいい、となれば、心がラク(句集って、なぜかアタマから読んじゃう、読まされちゃう。拘束はないはずなんだけどね)。

俳句には、いろんな楽しみ方がある。つくるにも、読むにも。そう思わせてくれる本。

なお、書名にある「二句二円」は、「ひとつの句の世界を円としたとき、ふたつの句を並べるとどうなるか。数学の授業で習った集合のベン図のように、ふたつの円の交わりには共通の要素があるかもしれないし、あるいはレオ・レオニの『あおくんときいろちゃん』のようにふたつの色が重なり合って、驚きとともにあらたな色が生まれるかもしれない」(三島ゆかり「あとがき」)といったアイデアに由来するとともに、1000句を収めたこの本の定価は1000円。1句につき1円、2句につき2円、というわけで、なかなか気がきいている。


三島ゆかり・中山奈々『フリーしりとり 二句二円』(2020年2月)/みしみし舎
問い合わせ≫https://twitter.com/officemisimisi


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