ラーメン
藤田哲史
10年くらい前のことだろうか。
「僕が今後もう会えない人というのがいるんだろうね」とふいに言った友人がいた。
人生のなかで出会うことのあった沢山の人達。そして、そのうちの何人かにはもう会うことがない。たぶん、そうなんだろう。
彼の言った内容は、誰もがなんとなく気づいている事実なのかもしれないが、そのときの彼の表情には、彼だけの切実さがあった。
彼は、少しさみしそうな顔をしていた。何か、考えているふうでもあった。
私は、気の利かない言葉をなんとなく返すことしかできなかった。
そのあと、彼と私はラーメンを食べに行った。
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最近になって、彼は最近『水界園丁』という本を刊行した。彼の切実さが詰まった、切実な本だった。
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