【空へゆく階段】№71 解題
対中いずみ「晨」49号(1992年5月号)掲載。本号の発表作10句。
天井の大鳴り厄を落しけり
厄落したるひとの手の赤きかな
山焼によき青空の濡れてをり
山焼のはじまる恋と思ひけり
山焼の日のおそろしき奥座敷
嵐山春の浮寝のつづきをり
よく見ればみな人の顔おぼろ夜は
囀りを聞くてのひらのつめたくて
春の虹蹴上あたりに立ちにけり
春寒の寺子屋にゐる心地する
「晨」40号からつづいた「読書室」もここで一段落する。
前年に波多野爽波を亡くし、この年、第三句集『櫻姫譚』を上木した。人生の大きな節目のころであろう。〈嵐山春の浮寝のつづきをり〉には師恋の風もある。
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