シリーズ【俳句のあたらしい作り方】
習慣化アプリ「みんチャレ」を俳句に利用してみた
千野千佳
蒼海17号(2022年9月刊行)より転載
四月某日、朝の情報番組で「みんチャレ」というアプリが紹介されていた。「みんチャレ」は習慣化のためのアプリだ。五人一組でチームを組み、チームのチャット欄で写真を送り合ってやりとりする。ダイエットや運動習慣のために利用するひとが多いこのアプリを、俳句に利用してみようと考えた。例えば、こどもの涎掛けの写真を撮って、それに〈夜濯や涎掛けにも子の名前〉と句をつけて投稿するような感じだ。
チーム名は「俳句を一日一句つくる」とした。一週間ほどでメンバーが集まり、現在も五人全員が欠かさず一日一句投稿している。このアプリに俳句のチームは五つほどあるが、全員が目標を達成しているのはわたしたちのチームだけだ。
わたしたちのチームではすべての句に対してコメントし合い、お互いの句の良いところを褒め合う。他のメンバーの句について、気になるところ(意味がわからない、安易な擬人化、季語のつきすぎなど)はあるけれど、指摘はしない。わたしも指摘されることはない。お互いニックネームで呼び合い、素性はわからない。五人の性格のおかげか、チームの雰囲気はほのぼのとしている。
ある日、うがい薬のイソジンの写真に〈入梅やうがひ薬の赤き蓋〉と投稿した。メンバーの一人が「身近なものを詠むということがよくわからなかったけど、この句でそれがわかりました」とコメントしてくれて嬉しかった。
また別の日はこどもの解熱剤の坐薬の写真に〈てのひらに座薬あたため夏の雨〉と投稿した。こどもの発熱に動揺していたので、メンバーからの励ましのメッセージがありがたかった。
さらにあるメンバーが「このチームに参加するようになってから、句会で句が選ばれることが増えました」とコメントしてくれた。思わずガッツポーズをした。
私自身にもメリットがたくさんあった。写真はネットの画像ではなく自分で撮ったものを使うと決めたことで、実景の句をつくるようになり、「もの」にフォーカスするという原点に立ち返ることができた。また一番身近な句材であるこどもの句を作ることも増えた。そして毎日連絡を取り合う俳句仲間ができたことがなによりも嬉しい。
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