【句集を読む】
古書と枯木
岩淵喜代子『末枯れの賑ひ』の一句
西原天気
古書増えて枯木が増えて雀たち 岩淵喜代子
《古書》と《枯木》はよく親和する。時間の経過をともなうからだろうか。買ったばかりの新刊本のページをはじめて開くときは、新樹の下が似合うのと対照的に。
作者は《古書》に《枯木》に囲まれて暮らす。そこにやってくるのが《雀たち》、あのかわいらしい鳥たちなら、愛すべき場所、愛すべき時間といっていいのだろう。
句集『末枯れの賑ひ』は、集中、ほかに、《電球の振れば樹氷林の音》(むかし電球を振って確かめた。フィラメントが焼き切れたら、かすかな音がした。樹氷林とは白さでもつながる)、《夜ごと咲く月より白き烏瓜》などの繊細な句、また《待春の海より明けてきたりけり》《ひとびとに柳絮飛ぶ日の来たりけり》《父の日や二階から見る大欅》など、おおらかでのびやかな句(付言すれば、いずれも切字が効果的)が心に残った。
岩淵喜代子『末枯れの賑ひ』2023年12月13日/ふらんす堂
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