【句集を読む】
舌と舌
加藤節江『風が吹く』の一句
西原天気
牛をみてアイスクリーム舐めてをり 加藤節江
観光客を受け入れる牧場では、そこで絞った牛乳からつくるアイスクリームを売っていたりする。それを舐めている人の視線の先には、牛。乳牛だ。
シンプルな構図をシンプルに描くこの句が、なんとも言えず可笑しいのは、そのあまりな一直線、そのまんま感のせいだと思う。
きっと牛の舌も見える。その舌と、アイスクリームを舐める人間の舌。読者は、同時に見比べて、やっぱり可笑しい。
修辞に凝るだけが俳句のおもしろみではないことを、こうやってときどき思い出す。
加藤節江『風が吹く』2023年5月20日/明日の花舎
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