2025-11-09

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】オフコース「季節は流れて」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
オフコース「季節は流れて」


憲武●ある曲を聴いていて、昔の一時期が鮮明に思い出されてくるといったことってありますよね。そんな曲の一つであるオフコースの「季節は流れて」。

 

憲武●この曲は『FAIRWAY』(1978)に収録されてます。鈴木康博作詞作曲ですね。ヴォーカルも鈴木康博が取ってます。オフコースはもともと小田和正と鈴木康博のフォークデュオとして出発しましたが、1976年頃から、清水仁、大間ジロー、松尾一彦の三人がサポートに入って、五人のバンド編成でライブ活動をするようになりました。

天気●バンドよりもデュオというイメージがありますね。ほとんど何も知らないながらも。

憲武●オフコース・イコール・デュオって、ある面では正しい捉え方と思います。清水仁はもとバッドボーイズ(ビートルズのコピーバンド)でポール役としてベース弾いてました。なのでなんとなく、へえーっ、ていう感じでしたね。突然加入してるっていう感じもあって。あとですね、松尾一彦の派手なギターは「らしくないな」と思ったりもして。

天気●この曲の音色とか?

憲武●はい。ちょっとBoston(バンドの)を思わせるような。歌詞は、好きな女の子を取られてしまって、数年経ってもまだ思い続けているせつない男の話です。この歌詞には突っ込みどころがいくつかありまして、まず「彼女はとても黒い服が似合う」。これはビートルズの「Baby's In Black」から頂いているのでないかと。ビートルズの方の歌詞は、スチュアート・サトクリフの恋人であったアストリット・キルヒャーのことを歌っているので、ブルーな気分にさせる黒い服ということで引用したのではないかと推測します。邪推でしょうか。

天気●いろいろ想像するわけでね。

憲武●あとは「モーションをかけた」と「すぐに受話器を置いて」ですね。今では一聴すぐには理解できないフレーズかと思われます。前者は「アプローチする、誘う」といった意味で、今では死語でしょうね。後者はおそらくこの女性は公衆電話から店に電話してるのでは、と受け取れます。

天気●携帯電話がなかった時代。

憲武●このアルバム『FAIRWAY』から次のアルバムが『Three and Two』になるわけですが、「オフコース」から「フェアウェイ」に乗り、次のアルバムから五人編成のバンドになったということで、当初ぼくはオフコースを「きみたち性欲あるの?」って感じで軟弱と思ってたんですが、アルバム『ワインの匂い』あたりで、そうでもないと思い始めて、この『FAIRWAY』からメジャー路線に乗り出した分岐点のアルバムだと思います。

天気●なるほど、そうなんですね。あまり知らないし、自分では聴いたことがないので、ごめん、どのエピソードにも「そうなんですね」とか言えなくて、ほんと、すいません。

憲武●いえいえ、もしかしたら天気さんは聴いたことないかなぁと、ちょっと怖くもあったんです。すみません一人で喋ってるみたいで。この曲の歌詞は、次々とシーンが目に浮かんで、店と歌われているレストランカフェの感じもイメージ出来ますし、自分の思い出と重ねてしまって切なくなります。トシですね。

(最終回まで、あと587夜)

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