【句集を読む】
奇妙な人たち
木村オサム句集『笑う円錐』
西原天気
木村オサム句集『笑う円錐』には、奇妙な人がちょくちょく登場する。
先輩の変な揺れ方祭笛 木村オサム
火事を見てちろちろ舌を出してみる 同
虎落笛タイの仮面を付けて寝る 同
一句目。祭笛に浮かれて、自然とからだが揺れるのか。その動きが「変」と、後輩に言われている。後輩の態度はよろしくないが、この先輩の「変な揺れ方」は否定しようのない現実なのだろう。
奇妙な人は、世界中にたくさんいるし、個人的には好きです。とりわけ文芸/フィクションにおいては奇妙な人に出会いたい。奇妙じゃない人ばかりいる世界は、なんて退屈なのだろう。俳句は「奇妙じゃない人ばかりいる世界」に陥りがちなようで、ときどき読んでいてあくびが出ます。
さて二句目。火事の炎を真似ているのでしょうか。不謹慎。
三句目。タイの仮面。まったく想像がつきません。想像を超えた外観なのだと思います。さらにいえば、狂気のナンセンス、みたいに感じないこともない(だとしたら、貴重)。
「もがりぶえ」なんていう、いかにも俳句な語/季語を使っちゃってます、作者。本気とは思えない使い方で。
ここに来て、奇妙なのは、登場人物ではなく、作者自身なのではないかと、全読者が思い始めます。
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句集の途中から、章ごとに同一の語を詠み込んだ句がずらずらと並ぶ様相になります。「海市」の章は「魚」や「潮干狩」など若干数の変奏はあるものの、「炬燵」「菜の花」「更衣」「虫売」「どんぐり」「火事」など、確認した範囲ですべて詠み込み。なにかいやなことがあったのか? と訝るほどの偏執ぶりです。巫山戯ているようでもないみたいで、それにまた、季語の選択がおかしい。自身で選択したようには見えません。誰かが出した席題でいやいやひねり出したような感じさえします。
やっぱりそうでした。作者、奇妙、と判断せざるを得ない。
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考えてみれば、書名の「笑う円錐」というのも、かなり奇妙です。なにしろ円錐なんですから。笑うのですから。奇妙な人です。
人じゃないというなら、そうとう奇妙な円錐です。
笑わない円錐といる冬館 木村オサム
木村オサム句集『笑う円錐』2026年10月/リトルズ
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