2026-11-01

〔著者に訊く〕細村星一郎さんに訊いた『現代俳句フロンティア U-30俳句アンソロジー』のこと

〔編者に訊く〕
細村星一郎さんに訊いた
『現代俳句フロンティア U-30俳句アンソロジー』のこと

聞き手:西原天気

Q●このたび細村星一郎さんが編集された『現代俳句フロンティア U-30俳句アンソロジー』が暁光堂から出ました。この本についてお訊きします。まず、この出版企画、きっかけのようなものはあったのですか?

星一郎●はじめは文フリに向けて同人誌でも作ろうかな、くらいの軽いノリでした。適当な企画が思いつかず友人に相談したところアンソロジーの話題になり、いいアンソロジーがないのなら勝手に作ってしまえばいいのでは? とひらめいたのがきっかけです。

Q●発端の動機、というか、動き出したのが「文フリ」向け、というところがおもしろいですね。今日的だ。

星一郎●企画を練っているうちにどんどん本格的な(?)雰囲気が出てきたので、これはもしかしてもっと腰を据えてやるべきプロジェクトなのでは……と思い至り、すぐに暁光堂の大穗さんに連絡。大穗さんも面白がって快諾してくれたので、書籍として制作する運びとなりました。思いついてから制作が決まるまでは3日間くらいだったと思います。

Q●迅速。暁光堂/大穗さんの存在は大きそうです。奇しくも、この【訊く】シリーズ、前回の谷雄介さん『ニュース』も暁光堂さんです。

星一郎●谷さんの句集も面白い試みですよね。大穗さんの仕事はインパクトももちろんなんですが、とにかく速くていつも驚きます。

Q●入集作家の年齢層は、巻末近くのプロフィールによれば、1996年生まれ(宮﨑莉々香、斎藤よひら)から最年少は2005年生まれ(関灯之介、辻村栗栖)。十代は入っていませんが、これは成り行きですか。それとも、何らかの意図が?

星一郎●意図とは少し違いますが、理由はあります。十代にも、選びたい(あるいは選ぶべき)作家は多数いましたが、100句という句数を考えた時に、作家として自由に試行錯誤を繰り返している最中の彼らの印象を現時点で固定してしまうことへの怖さが僕には拭い切れませんでした。もう少しざっくり言えば、若い作家の100句を本人の意思ではない形で取り上げることがお互いにとって幸せなのか? という点に疑問符がついた感じです。ただ、おそらく僕の考えはお節介でしかなくて、すでに十分な作家性(作風が確立しているということではなく、作家としての意志を持っているという意味で)を獲得している書き手も十代には多くいるのだと思います。

Q●質問しておいてから、思ったことなのですが、十代が入っていないことには、大きなメリットがあるんじゃないですか。10年後に「アンダー30」のアンソロジーが誕生するとき、入集作家がぜんぶ入れ替わる、という。

星一郎●たしかに! それを狙っていたということにさせてください(笑)

Q●先行のアンソロジーとして『新撰21』『天の川銀河発電所』が挙げられています(あとがき)。『超新撰21』も含め、編集していくうえで参考にした部分、指針になった部分はありますか?

星一郎●どちらも非常に参考にしました。人数や自選100句というスタイルは『新撰21』を踏襲していますし、評者の人選は『天の川』メンバーを大いに参考にしました。一方で踏襲しなかった部分はというと、『新撰21』の「句集出版や主要俳句賞の歴がない作家」という条件と、『天の川』の「入集者ごとに句数の差を設け、また公募枠を設ける」というスタイルの2点です。これは単に役割の違いで、『フロンティア』は無名新人の発掘というよりは若手俳人の整理と紹介という意識で作ったためにそうなったという感じですね。「俺たちこんなに面白いんだぜ」って感じで俳句界の内外に若手層全体の存在をレペゼンするわけですから、縛りや作家ごとの差はノイズになると判断しました。

Q●アンソロジーの制作はご苦労が多いと思います。なかでも、人選。誰を入れて、誰をはずすか。根幹の部分ですね。どんなご苦労があったかお聞かせください。

星一郎●まず根本となる「U-30」という枠組みについては、明らかに大塚凱さんを基準として策定しました。凱さんは1995年生まれの31歳です。もちろん若く、全体で言えば僕らと同じ若手と分類される作家ではあるのですが、肌感覚としては「ひとつ上の世代」という印象があります。これは凱さん自身もおっしゃっていたことで、やはり『天の川』に象徴されるような佐藤文香さんあたりから凱さんまでの、平成の空気をまとった世代感というか。その曖昧な境界というのが僕ら若手の中にも共通認識としてあったので、それを可視化してみた感じです。

Q●まず、年齢のレギュレーションが決まったのですね。考えてみれば、「30」に必然性はない。

星一郎●はい。具体的な人選についてはいろいろ考えたので一言で答えるのは難しいですが、地理的な広がりは一番意識したかもしれません。目立つ作家を集めるとどうしても「首都圏生まれ首都圏育ち」という属性に偏ってしまうのが否めなかったので、意識的に各地方にルーツを持つ作家を入れています。そもそも僕自身が地方出身ですし。北海道の柳元、山形の滝口、金沢の若林、斎藤・横井・川田・馬場(・細村)の関西勢、四国の中矢・柊木、そして鳥取の山口遼也……という具合です。無論これは、上手くバラけるように出身地を見て当てはめたというわけではなく、それぞれにまず書き手としてのリスペクトがあっての選出なのですが。

Q●20人の並び順は、どのように決めたのですか?

星一郎●五十音順です。いったんそれで並べてみたところ思いのほかバランスや展開の波に富んだ構成になったので、変にイジる必要はないと判断しました。

Q●なるほど、「細村星一郎」だけ、その順から外れてラスト、なわけですね。たくさん聞かせていただきました。最後に、誰に向けてでもいいです。いま言っておきたいメッセージがあれば、どうぞ。

星一郎●『フロンティア』は成果ではなくはじまりです。入集した作家や評者、そしてこれを読んでくれたみなさまと一緒に、この本が生まれた意味をここから作っていけたら嬉しいです。短歌ブームが叫ばれて久しいですが、未来から振り返ったときにこの本が「俳句ブーム」の嚆矢となっていたら最高ですね。


細村星一郎編『現代俳句フロンティア U-30俳句アンソロジー』

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