2007-10-14

俳ラ14に行ってきました 小林鮎美

俳ラ14に行ってきました ……小林鮎美
photo 今溝協




『週刊俳句23号』の宮崎二健さんの記事と、トーキョーハイクライターズクラブでお世話になっている谷雄介さんの告知を受け、10月7日、俳句朗読のイベント《独演!俳句ライブ14》へ行く。

なんとなく一人では心細かったのでサークルの後輩(俳句甲子園出身)と友人(俳句未経験)を連れてゆくことに。会場は新宿のJazz Barサムライ。

薄暗い店内に入ってまず目に入ってきたのは

  毛 穴 に 兄 が い る    ギネマ

と墨で書かれた短冊(書初め用紙)。ステージ上に所狭しと貼られている、俳句の書かれた短冊のうちの一つです。そして何故か店内のいたるところに招き猫が飾られています。あ、怪しい・・・・・・。
















さて開演です。まずは神山てんがいさんの流れるような口上。慣れない雰囲気に落ち着かなかった私と友人でしたが、これで一気に舞台に引き込まれます。そして演目へ。


一 「未来予想図Ⅱ」 

トップバッターは30年後からタイムスリップして来た(と、言い張る)タニユースケさん。俳句で30年後の自分の生活の悲惨さを訴えます。家族のこと、痴漢疑惑に怯えて過ごす満員電車のこと、窓際に追いやられた仕事のこと。上半身裸で出てきたのですが、たるんだお腹がリアルでした。

  中 吊 り 広 告 に ま で 馬 鹿 に さ れ て ゐ る

  春 風 や そ れ で も 僕 は や つ て な い

  肩 書 き は「 第 二 総 務 部 特 別 庶 務 課 課 長 代 理 」天 高 し

  な ん だ か 最 近 上 司 が 優 し い 、木 瓜 が 咲 き 始 め た

  一 番 に わ た し を 照 ら す 西 日 か な


二  「可も不可も」

続いてはギターを持って登場、ながしろばんりさん。俳句の弾き語り。初めて聞いたクマゼミの鳴き声や、痛風になってしまったことに対する嘆き、など。

  可 も 不 可 も 甲 斐 性 も な く 蟻 を 追 ふ

  死 ね 死 ね と 鳴 く 汝 こ そ 去 ね、ク マ ン ゼ ミ

  サ ン ダ ル の 裏 っ か へ し よ 曼 珠 沙 華

  ベ ラ ン ダ に ク マ ち ゃ ん 下 が る 誰 か 助 け て

  痛 風 の 犬 、 花 、 畑 、 ト コ ロ テ ン

俳句の弾き語りを聞いたのは初めてでしたが、違和感なく聞き入ることができて、耳に残るものが多く、新鮮でした。偶然にも私の後輩とばんりさんは以前から知り合いだったのですが、後輩によるとネタではなく本当にばんりさんは痛風らしいです。どうかお大事に。


三 「天狗豊年譚」
回文俳句でもおなじみ、俳ラ創始者の宮崎二健さんは天狗仮面俳句怒号と称して暴れます。ほら貝のような音がするペットボトルで作ったらしきラッパのような楽器を吹きながら、天狗の仮面を着け、ありったけの褌を締め、腰まわりにたくさん風船をぶら下げて登場。そのパフォーマンスに会場のテンションが一気に上がります。


 ね ぎ ら い も 値 切 ら れ も せ ず 秋 茄 子

 便 器 で 泳 い で い た 蜘 蛛 を す く っ た

 死 刑 台 の 下 で 恋 の 町 札 幌

 黄 色 い 菊 に 囲 ま れ て い た

 天 狗 の 紅 葉 山 が モ ヒ カ ン に さ れ た




退場の際、朗読で消耗したのか、ラッパの音がかすれていたのが印象的。

四 「経産婦の恋」

去年は飛び入りで参加したという桃色川柳の緋川小夏さん。娘さんの制服を着て登場です。「こくご」と書かれたノートを開き、エロかわいい句や、しっとりした大人の恋の句を朗読。観客から笑いがおこります。

  恋 仲 も 三 寒 四 温 を 重 ね け り

  秋 茄 子 を 下 の お 口 で 食 べ る 嫁

  ぬ か る み に 足 を 取 ら れ て ベ ッ ド ・ イ ン

  口 紅 が 嘘 を つ く た び 剥 げ て ゆ く

  肉 棒 で 徒 然 な る ま ま 奥 の 細 道

最後に「皆さんの奥の細道に明るい未来がありますように」と言い残し退場。経産婦、ステキです。

ここで中入。飛び入り参加者の時間です。今年は計七人が、自主的に、または司会の谷さんや周囲の人に唆されて舞台に上がりました。早口俳句から回文短歌、女子大生によるダムの話まで、皆さんパフォーマンスの内容は様々でした。中村安伸さんが朗読した〈あたたかな便座が嫌い星月夜〉という句が、今も頭に残っています。

ちょっとの休憩を挟んで後半へ。


五 「一人曲馬 ~酔いどれ縦遊篇~」
後半一人目は開演の口上もやっていた神山てんがいさん。俳句朗読を取り入れた一人芝居。講談のような話芸と、パントマイム、弾き語りなどを用いて、極貧生活を送るサーカスの雑用係の青年が、サーカス小屋での恋愛を経て、成長していくさまを描く。幻想的で、どこか爽やかな後味を残すパフォーマンスでした。

  か さ ぶ た を 剥 が せ ば 戻 る 日 々 と 云 う か

  舞 茸 だ か 女 の 指 だ か わ か ら ぬ 停 電

  蝉 父 知 ら ず 夏 お つ な ず ら し 乳 見 せ(回文)

  喉 仏 に 部 屋 を 持 ち た し 君 の 住 む

  俺 の 帽 子 が ど ぶ が わ で 「 さ ら ば お ま え も が ん ば れ と 」

  あ だ 花 の 世 に こ そ 曲 馬 狂 い 咲 け


六  「淋しい花瓶」

大トリは第一回から出演のギネマさん。新宿南口で自作の詩集を売りながら、去っていった男を待ち続ける南口鈴代(51)の、死の直前の魂の叫び。その鬼気迫る怪演と、発する言葉のインパクトに会場は引き込まれます。


 彼 の 爪 で 瘡 蓋 剥 が す 予 定 で す

 父 は 石 鹸 を 可 愛 が る の だ っ た

 ア タ シ も 泣 き た い と 夜 の 自 販 機 濡 れ て

 電 子 レ ン ジ で あ の 人 を 増 や し て い ま す

 餓 鬼 よ 私 の 窓 を 叩 け

 恋 埋 め し 木 に 生 る 奇 妙 な 果 実 か な


全ての演目が終わった後は私も友人も、ぐったりと疲れていました。心地よい疲労感。俳句朗読のライブということで、かなり内輪向けなイベントなんじゃないかと心配していたんですが、店を出たとき、全く俳句をやったことのない友人が「なんかよくわかんなかったけど、すごく良かった。次も誘って」と言ってくれて、それがとても嬉しかったです。

演者さんそれぞれが独自の俳句の世界を展開されていて、俳句朗読にはこんなに多種多様な表現があるのかと吃驚。楽しませていただきました。


  ち ぐ は ぐ に 積 み 木 積 ま れ て 豊 年 祭   二健




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