page 笠井亞子
すさまじき背中向けたる広辞苑
七五三落丁もあり乱丁も
文中の喧嘩の果ててより時雨
枯庭や栞の分けるきのふけふ
一葉忌句点ほろりとぶらさがる
古本に裾野がありて寒の猫
行間を出て帰らぬ鴨となり
襟巻や誤読のやうに夜が来て
真夜中の頁を渡る兎かな
図書館の暗さに似たる冬と思ふ
幻魚 相子智恵
地に雪嶺生れ雪嶺に雲うまれ
連山は雪積みてこそ空に鳥
枯野なり鈴結はへたる乳母車
勢ひの落葉の中を人消えぬ
冬の日や額縁ばかり大きな絵
鶏の餌を撒きてむせたる冬日かな
短日の鳩寄り来るや何も遣れず
ひよろひよろと幻魚干されぬ雪催
深海に幻魚どろりとクリスマス
富士壺の口寒月の照らしをり
2007-12-16
第34号 2007-12-16 10句作品 テキスト
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