2008-01-06

2008年新年詠テキスト

はや乾く飾の歯朶やちりちりと    相子智恵   
舞ふ猿にわつと泣き出す子供かな   青島玄武
黒潮の大きくうねる初日の出     飯田哲弘
稿積みて水聴くごとし大旦      五十嵐秀彦
信頼は皆無と六日排卵し       井口吾郎
そこここに地下街の口初茜      生駒大祐
着ぐるみの覗き穴から去年今年    石原ユキオ
巨きな手が 世界を記述する ゴドーの黙示 宇井十間
正月のビーチをとんで雀かな     上田信治
去年今年分け隔てたる皮一枚     上野葉月
初荷よりこぼれし菜なり啄める    うまきいつこ
まづは逢ふ日に丸付けつ初暦     梅﨑実奈
美しく前髪そろふ初湯かな      兎六
地球いま淑気に瀕し回りをり     遠藤 治
背に肉のつき大吉の神籤ひく     大石雄鬼
人日や塵なきエステティックサロン   太田うさぎ
古池に「意味」ぎっちぎちや寶船   大畑 等
初春のうらがへしあるバケツかな   大穂照久
三が日客を見てゐるインド人     岡田由季
淑気満つ天気予報の声高し      岡本飛び地
新年の干支といえども逃がしません  お気楽堂
福寿草ひかりに音のしていたる    越智友亮
娘のすでに婚家の味となる雑煮    小野富美子
書初の妊の一字の緊(し)まりけり   戒波羅蜜多 麟
年立つや雪原の弧のひろやかに    柿崎理恵
掃いて知るや元旦の底に底      笠井亞子
こんなとき冬眠中であるならば    加藤かな文
読初は手擦れし「三丁目の夕日」   金子 敦
懸想文売に声かけられもせり     菊田一平   
娵が君テレビの耳を落としけり    敬愚(ロビン・ギル)
楪の抜けやすき注連飾かな      久保山敦子
あらたまの町の向かうに町のある   小池康生
寝正月とはこの人のことを言う    神野紗希
初鶏や七面鳥を見下ろしに      興梠 隆
門松をちょっと直して家出せり    こしのゆみこ
七種のわづかに萎れ売られけり    小林苑を
君が代は旧きしきたり初御空     米男。
獅子舞のビルの隙間に獅子を脱ぎ   近 恵
父という絶海にいて年の酒      斉田 仁
餅花をすこし揺らして開店す     齋藤朝比古
曳猿のやや着崩れてをりにけり    さいばら天気
飛び立てば羽ばたきやめず初雀    榮 猿丸
あなたよりカムイユウカラ初山河   榊 倫代
初春の印刷術やにほひけむ      佐藤文香     
初雀役の雀がこの雀         佐山哲郎
みすぼらしき元旦のわたしなり    澤田和弥
こは福寿草のひと群人生まれ     島田牙城
もうすでにはみだしてゐる今年かな  鈴木茂雄
煙突に空あるばかり三ケ日      鈴木不意
初夢に祇園界隈焼亡す        すずきみのる
橙はテレビの下へ転げけり      そわもとあき
七草粥第七官界彷徨         高橋洋子
駱駝色の駱駝あゆめり初ゆめに    田中亜美
窓枠に窓おさまりぬ寝正月      谷 雄介
気がつけば口開けてゐる去年今年   茅根知子
川風の堤をあふれ福寿草       津川絵理子
開閉のたおやかなりし姫始      津田このみ
尻尾から始まる年やかたちなし    寺澤一雄   
恵方とは反対へ行くお父さん     峠谷清広
年の夜の栞のさしてありにけり    鴇田智哉
矢のやうに過ぎゆく一生(ひとよ)手毬唄  冨田拓也
元日の掃除機顎を上げ眠る      仲 寒蝉
忠実な語呂合わせある賀状かな    永井 誠
黒髪の乱れてゐたる歌留多かな    中嶋憲武
酔ひどれの父に先んじ初湯殿     中田八十八
群衆に祖父の背ナあり大旦      中原育己
煩悩の数まで連句去年今年      中原徳子
初夢やいちまいの海買うてをり    中村光声
初空や黒船に塗る黒きもの      中村安伸
同名の人の不運を聞く三日      中山宙虫
丁度よく疲れ双六始まれり      西川火尖
コンビナート越しの初富士瞳瞳と   猫髭
十二月三十二日寝酒かな       野口 裕
陽の生るる峡御降の生るる峡     橋本 直
あけまして豚児と愚妻おめでとう   長谷川 裕
初夢の空花柄に霽れてゐる      羽田野 令
国訛いまだなほさず嫁が君      馬場龍吉  
初売の暦一面星座かな        浜いぶき
手も洗ひ飽きて三日の虚(うつ)け空  媚庵
爛々と闇に鹿の眼初昔        広渡敬雄   
元朝のをぢの林の切株よ       振り子
初風や肌のいびつな茹で卵      星 力馬
粗玉をみがくねずみの夢を見た    堀本 吟
元旦や物干竿に日の当たる      松本てふこ
福寿草祖母の言ふ今年が最後     瑞穂
初夢の尖っていたり膝頭       三宅やよい
初春の部屋着に部屋のにおいかな   宮嶋梓帆
黒豆を明るい方へ寄せにけり     宮本佳世乃
山道のはじまる家の注連飾      村田 篠
手鞠つく空気を少しふくらませ    モル
東北線一本で行く二日かな      山口東人
夢の世のゆめ寒山の初笑ひ      山﨑百花
四日はやユーミンがスキップしてゐる 山下つばさ
人の背のみな黒々と初詣       山本勝之
カンガルーの尾のつつかひ棒去年今年 吉田悦花
酒すこし師に正月の佳句のなし    狼爾
風のごと猿たたずめり猿廻し     山口優夢
手毬子の影踏まれたり轢かれたり   谷口智行
尾をいまだ昨夜に残せる嫁が君    村上瑪論
人日の軽い頭痛を持ち歩く      佐藤登季
正月の日向に出でし坊主かな     雪我狂流

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