はや乾く飾の歯朶やちりちりと 相子智恵
舞ふ猿にわつと泣き出す子供かな 青島玄武
黒潮の大きくうねる初日の出 飯田哲弘
稿積みて水聴くごとし大旦 五十嵐秀彦
信頼は皆無と六日排卵し 井口吾郎
そこここに地下街の口初茜 生駒大祐
着ぐるみの覗き穴から去年今年 石原ユキオ
巨きな手が 世界を記述する ゴドーの黙示 宇井十間
正月のビーチをとんで雀かな 上田信治
去年今年分け隔てたる皮一枚 上野葉月
初荷よりこぼれし菜なり啄める うまきいつこ
まづは逢ふ日に丸付けつ初暦 梅﨑実奈
美しく前髪そろふ初湯かな 兎六
地球いま淑気に瀕し回りをり 遠藤 治
背に肉のつき大吉の神籤ひく 大石雄鬼
人日や塵なきエステティックサロン 太田うさぎ
古池に「意味」ぎっちぎちや寶船 大畑 等
初春のうらがへしあるバケツかな 大穂照久
三が日客を見てゐるインド人 岡田由季
淑気満つ天気予報の声高し 岡本飛び地
新年の干支といえども逃がしません お気楽堂
福寿草ひかりに音のしていたる 越智友亮
娘のすでに婚家の味となる雑煮 小野富美子
書初の妊の一字の緊(し)まりけり 戒波羅蜜多 麟
年立つや雪原の弧のひろやかに 柿崎理恵
掃いて知るや元旦の底に底 笠井亞子
こんなとき冬眠中であるならば 加藤かな文
読初は手擦れし「三丁目の夕日」 金子 敦
懸想文売に声かけられもせり 菊田一平
娵が君テレビの耳を落としけり 敬愚(ロビン・ギル)
楪の抜けやすき注連飾かな 久保山敦子
あらたまの町の向かうに町のある 小池康生
寝正月とはこの人のことを言う 神野紗希
初鶏や七面鳥を見下ろしに 興梠 隆
門松をちょっと直して家出せり こしのゆみこ
七種のわづかに萎れ売られけり 小林苑を
君が代は旧きしきたり初御空 米男。
獅子舞のビルの隙間に獅子を脱ぎ 近 恵
父という絶海にいて年の酒 斉田 仁
餅花をすこし揺らして開店す 齋藤朝比古
曳猿のやや着崩れてをりにけり さいばら天気
飛び立てば羽ばたきやめず初雀 榮 猿丸
あなたよりカムイユウカラ初山河 榊 倫代
初春の印刷術やにほひけむ 佐藤文香
初雀役の雀がこの雀 佐山哲郎
みすぼらしき元旦のわたしなり 澤田和弥
こは福寿草のひと群人生まれ 島田牙城
もうすでにはみだしてゐる今年かな 鈴木茂雄
煙突に空あるばかり三ケ日 鈴木不意
初夢に祇園界隈焼亡す すずきみのる
橙はテレビの下へ転げけり そわもとあき
七草粥第七官界彷徨 高橋洋子
駱駝色の駱駝あゆめり初ゆめに 田中亜美
窓枠に窓おさまりぬ寝正月 谷 雄介
気がつけば口開けてゐる去年今年 茅根知子
川風の堤をあふれ福寿草 津川絵理子
開閉のたおやかなりし姫始 津田このみ
尻尾から始まる年やかたちなし 寺澤一雄
恵方とは反対へ行くお父さん 峠谷清広
年の夜の栞のさしてありにけり 鴇田智哉
矢のやうに過ぎゆく一生(ひとよ)手毬唄 冨田拓也
元日の掃除機顎を上げ眠る 仲 寒蝉
忠実な語呂合わせある賀状かな 永井 誠
黒髪の乱れてゐたる歌留多かな 中嶋憲武
酔ひどれの父に先んじ初湯殿 中田八十八
群衆に祖父の背ナあり大旦 中原育己
煩悩の数まで連句去年今年 中原徳子
初夢やいちまいの海買うてをり 中村光声
初空や黒船に塗る黒きもの 中村安伸
同名の人の不運を聞く三日 中山宙虫
丁度よく疲れ双六始まれり 西川火尖
コンビナート越しの初富士瞳瞳と 猫髭
十二月三十二日寝酒かな 野口 裕
陽の生るる峡御降の生るる峡 橋本 直
あけまして豚児と愚妻おめでとう 長谷川 裕
初夢の空花柄に霽れてゐる 羽田野 令
国訛いまだなほさず嫁が君 馬場龍吉
初売の暦一面星座かな 浜いぶき
手も洗ひ飽きて三日の虚(うつ)け空 媚庵
爛々と闇に鹿の眼初昔 広渡敬雄
元朝のをぢの林の切株よ 振り子
初風や肌のいびつな茹で卵 星 力馬
粗玉をみがくねずみの夢を見た 堀本 吟
元旦や物干竿に日の当たる 松本てふこ
福寿草祖母の言ふ今年が最後 瑞穂
初夢の尖っていたり膝頭 三宅やよい
初春の部屋着に部屋のにおいかな 宮嶋梓帆
黒豆を明るい方へ寄せにけり 宮本佳世乃
山道のはじまる家の注連飾 村田 篠
手鞠つく空気を少しふくらませ モル
東北線一本で行く二日かな 山口東人
夢の世のゆめ寒山の初笑ひ 山﨑百花
四日はやユーミンがスキップしてゐる 山下つばさ
人の背のみな黒々と初詣 山本勝之
カンガルーの尾のつつかひ棒去年今年 吉田悦花
酒すこし師に正月の佳句のなし 狼爾
風のごと猿たたずめり猿廻し 山口優夢
手毬子の影踏まれたり轢かれたり 谷口智行
尾をいまだ昨夜に残せる嫁が君 村上瑪論
人日の軽い頭痛を持ち歩く 佐藤登季
正月の日向に出でし坊主かな 雪我狂流
2008-01-06
2008年新年詠テキスト
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