2008-02-03

【週俳1月の俳句を読む】齋藤朝比古

週俳1月の俳句を読む】
以前テレビで黒柳徹子が
齋藤朝比古




新聞に切り抜きの穴うぐひす鳴く   上田信治

決して見得を切ることのない作風の「文鳥」。集中、他の9句の大半に見られる【読者を意識していない】風の肌合いとは一線を画す衒いいっぱいの句。二物衝撃の波長が絶妙。俳句でしか言い得ない感興あり。


凩の聞こえてきたるバイオリン   茅根知子

端正でオーソドックスな作風の「正面の顔」。集中、少々異質な一句で好み。凩を違うものに置き換えてみても意外とすんなり受け入れられてしまう危惧はあるけれど。以前テレビで黒柳徹子が「バイオリンを弾いて初めて気がついたんですけど、バイオリンは弾いている人に一番大きな音が聞こえてくるんですね」と言っていたことを思い出した。


関西の騙されやすき枯木かな   岡村知昭

独特の世界観を表出する「ふくろうワルツ」。かなり力感のある句が並ぶ集中、掲出句のなんともいえない飄々とした風合いはすっと吾が琴線に滲みこんで来た。「カ」音の韻律のよろしさ。「に」ではなくて「の」にしているところ、作者の優しさ。


煮凝りに鮟鱇の足ありにけり   対中いずみ

韻律のよろしさと措辞の的確さに巧さを感じる「氷柱」。さらさらと流れるような作風のなか、ふっと目が留まる一句。「あぁ、鮟鱇の足あるよね…」などと一瞬思わせてしまうのは「煮凝り」というカオスを感じさせる季語の効用と座五の俳句的断定の潔さ。


門外に雪のざわめく辰の刻   村上瑪論

新撰組をモチーフとして、俳句にドラマ性を持ち込んだ「回天」。集中唯一実景のスケッチとしても十分なポテンシャルありの掲出句。古風な言い振りでありながら、そこはかとなく漂う現代の無機的な匂い。


最果ての地にも蒲団の干されけり   青山茂根

当たり前のことを当たり前に詠むということにはあまり興味を持たないような作風の「珊瑚漂泊」。集中、唯一写生的な句。写生的ではあるけれど、本当に見たのかどうかなどはどうでもよろしいこと…そんな主張あり。「最果て」というとどうしても「北」を思ってしまうのは何故だろう。




特集
「週俳」2008新年詠→読む
青山茂根 珊瑚漂泊 10句  →読む
村上瑪論 回 天 10句  →読む
対中いずみ 氷 柱 10句  →読む
岡村知昭 ふくろうワルツ 10句  →読む
茅根知子 正面の顔 10句 →読む
上田信治 文 鳥 10句 →読む



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