2008-04-06

第2回週刊俳句賞 石田郷子 選と選評

石田郷子 選と選評



01 屋根  2点

「渋滞の灯一連柏餅」「行々子夜の公園は木の密に」「夕暮れの明るさの瓜冷やしけり」「カーテン吹かれ虫籠にとどかざる」など清々しく、季節感があった。「屋根の上に」は「憩ひをり」で詩情が打ち消されたのではないかと思ったがどうなのだろう。おそらく、伝わりきれないものがあるのだろう。それを知りたい。

09 ハーモニカ  2点

端正な句を作る人だと思った。「春の風ハーモニカには穴の列」「カーテンのなみうちぎはへ春の雪」「ことごとく空を透きたる梅見かな」「図書館の窓あをあをと春休み」など作者の感覚は新鮮と思う。「春の灯のともり柱の短さよ」はどうもわからなかったが、あとは明快。

22 傘のうら  2点

「踏青や髪上げてより鬼となる」は自画像か。青春性のある作品だと思う。「鉄骨の組み上がりけり木の芽吹く」「ごつそりと雄蕊の束や落椿」など、景を見せてくれる。「蒲公英」の句は「真空」に理がある。若い人に強いることではないが、どうもやはり、率直に詠んだ句は強いのである。


ほかに「婚礼の胸を花野と思ひけり」「春愁のパンの空気を抜きにけり」「「卒業の朝の新聞読みにけり」「粉雪を食う全身を空にして」「負けたんじゃない譲ったの春の鹿」など心に残った。出来るかぎり質を高くそろえることが大切だと思います。たくさん作った中の粒ぞろいの十句であってほしい。読む方としては。




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