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2026-06-21

大穗汽水さんへの「10の質問」〔週刊俳句賞回顧〕

 〔週刊俳句賞回顧〕

大穗汽水さんへの「10の質問」


Q1 2008年に第2回週刊俳句賞を受賞されました。当時の思い出や印象に残っていることを教えてください。

このたびは週刊俳句1000号おめでとうございます。大穗汽水です。ひさびさの週刊俳句で緊張しています。
週刊俳句賞は今まで2回しか開催されていないので、わたし大穗が最後の受賞者もとい、週刊俳句賞を終わらせた男でございます。

受賞句を久々に見返しました。20年近く前のことなのであまり思い出せることは少ないのですが、玉川上水でぶらぶら散歩したときに見上げた空に浮かんでいた昼の月が受賞作のタイトルの由来です。これについてはけっこう気に入っています。

当時週刊俳句の記念パーティーで授賞式を開いていただきました。西原天気さんがキンクスのCDを、宮本佳世乃さんがTHE YELLOW MONKEYのCDを、それぞれ賞品としてくださったのを覚えています。

The Kinks - Waterloo Sunset


Q2 週刊俳句賞を受賞して、その後の俳句活動に何か影響がありましたら、教えてください。

参加者をあらためてみると、ほんとに豪華なメンバーですね。このなかから選ばれたのはとても光栄でした。
受賞したことで劇的な変化があったわけではないですが、実生活の忙しさからしばらく俳句を離れていました。

受賞後の俳句から距離を置いた生活の中で、自分は俳句賞をとって有名になりたいのか、俳句が上手くなりたいのか、俳句を読みたいのか、俳句を通して人と交流したいのか、自分にとっての俳句は何だろう?と色々と考えた空白期間が、今でも暁光堂の一つの軸になっていると思います。


Q3  第2回週刊俳句賞は大学生大会として開催されました。当時の参加者で今も交流がある方はいますか。

参加者の中では、生駒大祐さんと一番会っている気がします。
最近は暁光堂が文学フリマに出店しているのでそこでお会いしますね。
他にも当時の参加者とよく会います。

文学フリマ東京43(次回の宣伝、暁光堂出店予定!来てね!)

当時も今も面識があるのは半数ほどでしょうか。同世代で他にも俳句が好きな人がいるんだと再認識できたのはうれしかったですね。


Q4 今は俳句の出版社「暁光堂」の店主でいらっしゃいますね。「暁光堂」の特徴・アピールポイントを教えてください。

はい、2019年から俳句のひとり出版社の暁光堂(ぎょうこうどう)をはじめました。もともと自分が読みたかった久保田万太郎が本屋に売っていなかったので自分で作ろうとおもったのがきっかけです。

俳句の本は自費出版が多かったり発行部数が少なかったりで絶版になりやすく、高い中古の本を買うしかない状況が現在でも続いていると思います。だったら自分で作ってしまおう、と思って始めました。

オンデマンド印刷・電子書籍を使って、阿部青鞋や波多野爽波など入手困難だった俳人の句集を手に取りやすい価格で復刊しています。

阿部青鞋や波多野爽波はほんとにおもしろいので是非読んでください。

阿部青鞋

波多野爽波 


Q5 「暁光堂」の運営において、だいじにしていること・たいせつに思っていることを教えてください。

まずは私自身が読んで面白いものが作れているか、活動を心の底から楽しめているかどうかを一番大事にしています。

その結果を皆さんが楽しんでくれれば最高に嬉しいです。


Q6 「暁光堂」の運営において、苦労することを教えてください(ひとつでも複数でもかまいません)。

やりたいことをやっているだけなので苦労はないです!

そもそもが本業を抱えながらの出版活動なので、最初から経済的・物理的に無理のない業務設計を心がけています。


Q7 10年後、「暁光堂」はどうなっていると思いますか。「こうなっていたい」という野望・願望でもかまいせん。

無理なく継続していることが一番大事ですね。
最初は電子書籍でスタートしましたが、今はオンデマンド印刷もやっています。
ひとつのことにこだわらず、まずは私自身が楽しいことを追求し続けていけたらいいなと思っています。


Q8 ご自分のことに質問が移ります。理想的な休日の過ごし方を教えてください。

よく寝たあと早起きして朝食をとり、天気が良ければ陽を浴びて風通しの良い緑のあるところに出かける。
体を動かして遊ぶ。夕方、早めに風呂に入る。旬の魚と野菜、炊きたてのご飯を食べて9時くらいに寝る。


Q9 好きな自然現象について、教えてください。

【夕立】

天気悪くなりそうな夏の午後にさっさと家に帰ってきて、早風呂に入り、
風呂から上がってTVを見ると甲子園は第四試合の3回裏が始まったあたりで、強豪の私立相手に県立高校のエースが打ち込まれて早々に降板した後、2番手変則サイドスロー投手が3点ビハインドのまま無失点で粘って、これから逆転のチャンスがくるのだろうか?という状況だったりして、遠くのほうから雷の音が近づいてきて、だんだんと空が暗くなり、やがて音を立てて夕立が降ってきて窓をたたき、街を濡らしていって、そのまま夜になる。そういう夕立が最高に好きです。


Q10 最後に、ご自分の最近作を5句教えてください。ベスト・オヴでも、単に直近の5句でも、どちらでもかまいません。

近作5句

時計屋の中の大きな花ミモザ
プールより見上げる東京タワーかな
渋谷まで歩けば少しのあいだ秋
まっすぐに祭りの横を過ぎにけり
冬晴の進水式のような午後









岡田由季さんへの「10の質問」〔週刊俳句賞回顧〕

  〔週刊俳句賞回顧〕

岡田由季さんへの「10の質問」


Q1 2007年に第1回週刊俳句賞を受賞されました。当時の思い出や印象に残っていることを教えてください。

19年前のこととあって、すべての記憶が曖昧なのですが、初回なのでよくわからないままに興味津々、お祭り気分で参加したと思います。応募後に豪華な選考委員が発表されてびっくりしたような記憶が・・・。互選や読者投票もあり、選評を書くのにドキドキしました。受賞後は関西でリアルのお祝い会もしていただきました。

たしか俳句研究賞が無くなって、その救済という意味もあったと思います。私も無くなる前まで俳句研究賞に応募していました。


Q2 週刊俳句賞を受賞して、その後の俳句活動に何か影響がありましたら、教えてください。

句会や俳句関係の集まりに行くと話題にしてもらえることが多く、自己紹介のネタとして良かったです。当時、週刊俳句自体が注目されていたんだと思います。ご褒美というか副賞というか、受賞したら自薦50句を掲載してもらえて、その鑑賞を樋口由紀子さんに書いていただいたのが良い思い出です。受賞作やこのときの50句から、第一句集『犬の眉』に多く句を入れています。

週刊俳句賞が第2回までで終わってしまったので、なんとなく受賞者の自分が地味だから賞が続かなかったのかな ?と思ったこともありました。今考えるとたぶんそんな理由ではないですね。

わりと最近まで略歴に「第一回週刊俳句賞受賞」と書いていましたが、さすがに年月が経って最近は書かなくなっていました。スミマセン。


Q3  第1回週刊俳句賞は40名の参加がありました。当時の参加者で今も交流がある方はいますか。

「炎環」や「豆の木」でご一緒している方や、今もSNS等で交流のある方がいますね。小池康生さんとはこのあと実際にお目にかかり、関西のイベントで時々お会いしていました。連載されていた「商店街放浪記」が好きでした。もう亡くなられて4年なのですね。寂しいです。

このときの顔ぶれを見ると、当時のネット俳句界隈で名前をおみかけしていた方が多いです。今は拡散してしまって、ネット上の俳句コミュニティのようなものは見えにくくなっているように思います。


Q4 今は「週刊俳句」の当番をしていますね。

はい。2017年に西原天気さんに声をかけていただき、当番の一人に加わりました。週刊俳句賞から10年後に中の人になるとは、思ってもみなかったことでした。他の当番は首都圏在住ですので、たぶん関西の人を入れたかったのかと。それからあっという間にさらに9年たちました。


Q5 「週刊俳句」の当番になって驚いたことはありますか

当番同士のコミュニケーションが思った以上に少ないことです。先日、1000号を前にしてオンライン会議があったのですが、そこではじめて全員の顔を同時に見ました。


Q6 「週刊俳句」以外の俳句活動について教えてください。

結社にも同人誌にも協会にも入っていて、リアル句会ネット句会が定期的にあり、依頼されたら原稿も書き、句集も2冊出して、と色々なことに少しずつ関わっているのですが、あわただしい割に何をやっているかわからなくなってきて、何か自分から発信することをはじめたくなりました。

そこで昨年末から「俳句ファンちゃんねる」というYouTube番組を始めました。毎週一冊、句集を読んでいます。


Q7 今後、そのYouTube番組はどうなっていって欲しいですか。

とりあえず、マイペースで続けていきたいです。難しいことを考えると続かなさそうなので、気楽に句集のウォッチングをするつもりでやっています。

しかしYouTubeは数字もだいじだと思うのでもし興味を持っていただけたら、のぞいてみてください。



Q8 ご自分のことに質問が移ります。理想的な休日の過ごし方を教えてください。

リュックにカメラ、双眼鏡、昼食のおにぎりを入れ、 クロスバイクに乗って野鳥を見に行きます。野鳥に出会えなくても、自然のなかを歩き回るだけでストレスが解消されます。今のカメラはCANON EOS R10、レンズはRF100-400mmです。

そういえば野鳥にはまったきっかけは、週刊俳句で、小津夜景インタビュー「海鳥ダイアリー」を担当したことです。


Q9 好きな自然現象について、教えてください。

霜柱。

子供の頃、踏まれていない霜柱を見つけて踏むのが楽しみでした。あの感触がいいですよね。関西ではほとんど霜柱を見かけないので残念です。どこかで見かけたらすかさず踏みたいです。


Q10 最後に、ご自分の最近作を5句教えてください。ベスト・オヴでも、単に直近の5句でも、どちらでもかまいません。

ユプシロンNo.8より
紫木蓮魔女の骨格うすくあり
春障子一輪挿しのやうな人
葱坊主以外の畝はまつさらに
夏の果骨組み立てるやうに起き
水蜜桃かなとこ雲の中光る



2008-04-20

関係各位 賞品提供のお願い

関係各位 賞品提供のお願い 2008-4-8
●第2回週刊俳句賞(大学生大会)は無事受賞発表に到りました。つきましては、有志団体・企業・個人様に副賞賞品を提供していただきたく、ここにお願い申し上げます。
●例:歳時記等俳句関連書籍、俳誌、筆記用具等等…
※過度に豪華な賞品はご遠慮ください。
※週俳賞参加22名への賞品振り分けは当方運営に一任ください。
●なお、御提供品目につきましては、誌上で紹介させていただきます。
●4月26日(土)一周年記念オフ会での授与に合わせ、お早めに、下記メールアドレスまでご連絡いたければ幸いです。
tenki.saibara@gmail.com

2008-04-06

第2回 週刊俳句賞(大学生大会) 発表

第2回 週刊俳句賞(大学生大会) 発表


はじめに、筑紫磐井、島田牙城、岩淵喜代子、今井聖、石田郷子(アイウエオ昇順)各氏に、深く感謝いたします。

応募者の皆様、お疲れ様でございました。

最後に、この「週刊俳句賞」応募作品をお読みいただいたたくさんの読者に、また、これから審査結果をお読みになるであろうたくさんの読者の皆様に、感謝いたします。

それでは、選考結果をお楽しみください。


●第2回 週刊俳句賞 選考結果  →読む

●応募22作品+作者名
         01-07  →読む
         08-14  →読む
         15-22  →読む
         テキストは→こちら

●特別審査員 選と選評  →読む

●互選結果  →読む

●読者投票結果  →読む

●第2回週刊俳句賞 集計  →見る

●応募者プロフィール  →読む

●打ち上げパーティ会場  →顔を出す


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第2回 週刊俳句賞 選考結果

第2回 週刊俳句賞 選考結果



●週刊俳句賞受賞作

16 大穂照久 昼の月 →読む

52点: 審査員得点 5(×8=40)・互選得点 5(×2=10)・読者投票 2


※総合点の積算方法:特別審査員配点×8+互選得点×2+読者投票
(特別審査員配点計30点・互選点数計66点・読者投票計39点)



●第二席

03 山口優夢 l i f e

45点:審査員得点 4(×8=32)・
互選得点 4(×2=8)・読者投票 5


●第三席

07 タニユウスケ 気分はもう戦争

44点:審査員得点 4(×8=32)・互選得点 2(×2=4)・読者投票 8



●高得点作品 
※数字は審査員得点(×8)・互選得点(×2)・読者投票数=総得点

10 小林鮎美 ぽろぽろと 43点=3(24)・6(12)・7 (第4席)

09 生駒大祐 ハーモニカ 38点=3(24)・5(10)・4 (第5席)

22 浜いぶき 傘のうら 36点=2(16)・9(18)・2 (第6席)

01 藤田哲史 屋根 32点=3(24)・4(8)・0 (第7席)

04 モル 異邦人 29点=2(16)・5(10)・3 (第8席)

21 酒井俊祐 心の底 26点=3(24)・1(2)・0 (第9席)

17 飯田哲弘 多孔質 19点=1(8)・4(8)・3 (第10席)


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第2回 週刊俳句賞 受賞作 大穂照久 昼の月

第2回 週刊俳句賞 受賞作

第2回 週刊俳句賞 応募22作品 01-07








第2回 週刊俳句賞 応募22作品 08-14







第2回 週刊俳句賞 応募40作品 15-22








第2回 週刊俳句賞 応募22作品 テキスト

第2回 週刊俳句賞 応募22作品 テキスト


01
屋 根  藤田哲史

屋根の上に春月のぼり憩ひをり
渋滞の灯一連柏餅
熱もてるノートパソコン夏痩す
行々子夜の公園は木の密に
夕ぐれの明るさの瓜冷やしけり
団扇つかふ胡座の股に肘つけて
蛇口よりほとばしりけり生身魂
桔梗の花よりその葉あたたかき
カーテン吹かれ虫籠に届かざる
壁の絵を取りかえてゐる野分かな


02
引 鳥  田中志典

在りし日の父の背中や夏木立
空澄みてIPOD鳴り止まぬまま
昼寝より覚めて芳し醤油かな
ざわめいて鉢の金魚は転回す
蝉鳴きて靴紐ぐつと結びけり
ちいさきがより強さなりふきのとう
五月雨の行き着く先が恋路なり
古書の香に成熟す洋梨おもふ
陽炎や空き家憮然と佇んで
鳥引いて母から便り届きけり


03
life  山口優夢

婚礼の胸を花野と思ひけり
かりがねや背中で閉まる自動ドア
耳に耳触るる寒椿のやうに
手の中の鍵のつめたき吹雪かな
恥づかしささびしさぬるき懐炉揉む
手袋の指抽斗にはさむなり
バレンタインデーの鞄の底に鋲
頬杖も人それぞれや大試験
春宵の花屋に寄らず帰りけり
カラオケに来て泣いてゐる卒業子


04
異邦人  モル

ひまわりのみな孤独なるアラベスク
暖房車ふと重くなる文庫本
湖に水足す銀の如雨露かな
粉雪を食う全身を空にして
西瓜畑隠れん坊の息消える
好きな子の跡をつければ遠花火
ケータイを落とす花畑の底に
稲光吸い込んでゆく枕かな
夏虫の争い標本瓶の中
異邦人の街へと続く夜店かな


05
傷ついて  羽田大佑

雪月夜言葉はナイフにもなつて
冬の夜や愛を言葉にして陳腐
自分から切り出す話冬の草
冗談に傷ついてをり冬苺
春近しキャプテン一人残りけり
龍天に昇る追悼コンサート
春泥を耕すごとく遊びけり
春愁のパンの空気を抜きにけり
山葵田の水は富士より温みけり
終盤の指揮は大きくクロッカス


06
海鳴り  奈月

話すことなくした雪の風見鶏
水鳥の声やタクシー休憩中
冬珊瑚兄が欲しいと海鳴りす
クレームの電話アロエの花盛り
午睡して幼き春を抱きけり
母は庭に夢を隠している二月
春風を呼ぶみずいろのハーモニカ
春ショール本音を描ききる鉛筆
卒業の朝の新聞読みにけり
てふてふのこゑは光をさそひけり


07
気分はもう戦争  タニユウスケ

開戦ぞ身近な猿の後頭部
撃たれてゲームソフトを交換す
ひろびろと乾くや印刷用の烏賊
竹やりに名前を彫りし彫り師かな
戦場を先づくちびるがもげてゆき
屏風もて運ぶ草生す屍かな
上空やミサイルは雌犬となりぬ
逃げまどふ防空づきん赤づきん
焼跡より出てくるテスト全部満点
終戦やリプトン紅茶永遠に


08
きりん  石塚直子

寒月や空の水槽光りたる
養豚車揺れ助手席のポインセチア
無精髭嫌ひ嫌ひと鱈鍋す
鍵の音重なりあつて御神渡り
返品雑誌堆うず高く漱石忌
少女らの頬赤かりし弓始
猫より欠伸移りし冬の日かな
石切り場より出でしかな冬の虹
スイッチを切りてひとりになる小春
春待つや蹴って蹴ってく補助輪車


09
ハーモニカ  生駒大祐

教会の影梅の木にかかりたる
春の風ハーモニカには穴の列
ことごとく空を透きたる梅見かな
図書館の窓あをあをと春休み
残る鴨ボート置き場のごちやとして
爛春の物みな顔にみえし日よ
花冷えの石碑に空のかすかなる
カーテンの波うちぎはへ春の雪
尻のせてふかき座椅子や百千鳥
春の灯のともり柱の短さよ


10
ぽろぽろと  小林鮎美

この先は各駅停車春の旅
卒業期画家の名前の喫茶店
春の私うずまき管をふたつ持つ
水槽に蛸の吸盤春の月
ぽろぽろと梅が咲く日のつけまつげ
梅を見ていて頭蓋骨白くなる
蝶の眼の中でわたしが裏返る
人間の頭重たき遅日かな
春愁トイレに青き水流れ
春の夕暮れ砂場から魚の歯


11
大 和  らくは

新涼や死にゆく祖父と話題がない
蛍光灯照るや螺旋の梨の皮
春空の底の電線修理中
負けたんじゃない譲ったの春の鹿
高校生ぴいちくぱあちく鷹鳩に
春の鹿のぬれた眼を奪ひたし
たいていのものは輝く春夕日
あの変な屋根は教会日足伸ぶ
春の山白い風車は発電中
泥ついて気にもせぬらし春の鹿


12
移りゆく四季の句  悠城

凍蝶の生の重さや石の上
霜を踏む音に重なる笑い声
雪婆冬の訪れ知らせゆく
雪解けのよどみし水の行く末は
ひな祭り心華やぐ雨夜かな
夜に咲く色とりどりの浴衣かな
打ち水をさす人々の優しさよ
夏の日の思い出詰めたラムネ飲む
朝露に濡れる足元いと涼し
膨らんだ餅の中には夢詰まる


13
青  岡本飛び地

かすみ草まあるく咲いて雨の音
春色のネイルなぞなぞあそびなり
祖母の梅また咲く熊のぬいぐるみ
ゆったりと曲がる二車線春の闇
交番のあたり明るし花の雨
香るもの多くてバレンタインデー
何もかも恐ろし川を行く子猫
回廊の慌しくて沈丁花
略奪愛未遂のままか猫の恋
菜の花は踏まないで手の鳴る方へ


14
四季の移り変わり  山風嵐

初雪と子どもの声が空に舞ふ
地に降りてすぐに溶けゆく細雪
小春日を浴びてしばしの一休み
夢を見て種蒔きすれば芽吹く色
道の途中菫の色が目の端に
満月の光届かぬ街の中
緩やかに巡る山々紅葉狩り
滴乗せあじさいの花の水遊び
水の中掬ひし金魚がひとりきり
稲妻の遠くの音が耳を打つ


15
四 季  水篶

朝寝するまどろむ君とただ二人
はたたがみ天の叫びか呼び声か
木漏れ日と素馨の香りに酔ひし午後
虫時雨耳に入れつつだんご食む
白菊が揺れる墓標よくぐつうた
窓辺より足跡たどる冬日和
夢に見し灰の雪ふる焼けた空
篝火へ向かひて死する冬の蝶
寂寞とたたずむ寒月吾に似て
東雲に冴え吹く疾風身に刺され


16
昼の月  大穂照久

冬凪やうすく華やぐ三角州
東より流るる川や雪しんしん
結氷をまだ見ぬ水辺にて遊ぶ
受刑者の横一列やクリスマス
一抹の水を抱ける芒かな
海岸に白き車や春浅し
春暁の鏡の裏の温みかな
蠟梅や蛇口に残る一雫
雨傘を乾かしてゐる春の宵
コンタクトレンズにあふれ春の水


17
多孔質  飯田哲弘

春宵の爪はぬぬぬと伸びゆけり
死に飽いて無垢なる二人静かな
胸骨のうらを涼しき牛のちち
炎昼に幽霊の歯が追ふてくる
多孔質の友よしつかり憎め憎め
神の名は多すぎないか秋の蝉
いつせいに埴輪の歌いだす良夜
大根の切りくち乾きゆくを見ゆ
鯰打ちのめされ雪の積もるまま
流木の哭きをる冬の苺買ふ


18
来歴否認  久留島元

鬼儺もう鬼の句も見飽きたし
継子だという夢を見る今朝の春
雪残る血液型を確かめる
春の雪本当の阿母さんはどこ
きさらぎや一つ目小僧追いかける
古都に居て木の芽は阿修羅像気取り
春の雨ガラスケースに土偶の眼
正体は流浪の王子いぬふぐり
涅槃西風テラノボンサンヘヲコイタ
トンネルを脱ければ雪の降らぬ国


19
日常の中で  果糖由宇

春の風邪ホットレモンに満たさるる
天然味ホップの旨みは深く苦い
夢多き笑顔ばかりや千歳飴
福笑い平成世代に薄れゆく
生姜湯すすりて熱の体かな
待ち人に涙一粒氷解く 
初雪で寒さ感ずる友の足
アリエナイ聖夜のともは参考書
やってきた春一番と花粉症
風車手に持ち歩む第一歩


20
暖かな、冷たくとも暖かな光  真白

門を出て霙混じりの花吹雪
てる坊主リュックに結び遠足へ
磯遊び岩陰のぞき貝つかむ
水槽にビー玉落とす暖かし
雪景色花火にあわせ変わる色
裸木をてんでに撓める吹雪かな
沈黙を轆轤でまわす外は雪
紅葉散るキャンドルファイアに照らされて
穏やかな草摘む指に海水晶(アクアマリン)
赤んぼう警戒しつつ手になずな


21
心の底  酒井俊祐

この朝の薄氷という底面も
亀鳴くや空からごみの降つて来る
雑貨屋の赤赤赤や涅槃の日
三寒四温喉元の髭残り
台本のB作が死ぬ月朧
部屋荒れてそろそろ緋桃咲いて来し
蛇穴を出てとろとろの化粧水
花水木杉並区からリクエスト
黄砂ふる有馬朗人の自筆かな
さつきまで夜汽車なりけり春の潮


22
傘のうら  浜いぶき

淡雪や展望室の仄暗し
白魚にちひさき眼透けゐたり
残雪の瘤のやうなる交差点
鉄骨の組み上がりけり木の芽吹く
蒲公英にあるひとすぢの真空よ
傘のうらの色やはらかき春の雨
ごつそりと雄蕊の束や落椿
春の塵連れ入線の電車かな
卒業の紅きスカーフほどきけり
踏青や髪上げてより鬼となる



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第2回週刊俳句賞 特別審査員 選と選評

特別審査員 選と選評


〔当別審査員 選と選評〕 (アイウエオ順)

石田郷子 選と選評  →読む

今井 聖  選と選評  →読む

岩淵喜代子 選と選評  →読む

島田牙城
 選と選評  →読む

筑紫磐井 選と選評  →読む



〔特別審査員配点・上位7作品〕

5点
16 大穂照久 昼の月

4点
03 山口優夢 life
07 タニユウスケ 気分はもう戦争

3点
01 藤田哲史 屋根
09 生駒大祐 ハーモニカ
10 小林鮎美 ぽろぽろと
21 酒井俊祐 心の底


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第2回週刊俳句賞 石田郷子 選と選評

石田郷子 選と選評



01 屋根  2点

「渋滞の灯一連柏餅」「行々子夜の公園は木の密に」「夕暮れの明るさの瓜冷やしけり」「カーテン吹かれ虫籠にとどかざる」など清々しく、季節感があった。「屋根の上に」は「憩ひをり」で詩情が打ち消されたのではないかと思ったがどうなのだろう。おそらく、伝わりきれないものがあるのだろう。それを知りたい。

09 ハーモニカ  2点

端正な句を作る人だと思った。「春の風ハーモニカには穴の列」「カーテンのなみうちぎはへ春の雪」「ことごとく空を透きたる梅見かな」「図書館の窓あをあをと春休み」など作者の感覚は新鮮と思う。「春の灯のともり柱の短さよ」はどうもわからなかったが、あとは明快。

22 傘のうら  2点

「踏青や髪上げてより鬼となる」は自画像か。青春性のある作品だと思う。「鉄骨の組み上がりけり木の芽吹く」「ごつそりと雄蕊の束や落椿」など、景を見せてくれる。「蒲公英」の句は「真空」に理がある。若い人に強いることではないが、どうもやはり、率直に詠んだ句は強いのである。


ほかに「婚礼の胸を花野と思ひけり」「春愁のパンの空気を抜きにけり」「「卒業の朝の新聞読みにけり」「粉雪を食う全身を空にして」「負けたんじゃない譲ったの春の鹿」など心に残った。出来るかぎり質を高くそろえることが大切だと思います。たくさん作った中の粒ぞろいの十句であってほしい。読む方としては。


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第2回週刊俳句賞 今井聖 選と選評

今井 聖 選と選評



04「異邦人」に2点。

全体として世界が静謐。自己の裡に沈潜したものを出そうとしている。

粉雪の句の「空」。西瓜の句の「息」。夏虫の「争い」。異邦人の句の「続く」。いずれも言葉に象徴力を与えている。静謐は言葉への配慮だけでは出ない。自己の肉体(精神もひっくるめた)に向ける眼があるからである。


10「ぽろぽろと」に2点。

「春の私」の句、「春愁」の句は白眉。見えるものから発想してイメージを拡げていくという順序がどの句にも徹底している。これは俳句の出自か生来の能力か。作品全体の「色」というべきものにも統一感があり、これもまた作者の力を示している。


03「life」に1点。

技術的に完成度が高い。多くの学びの跡が文体に見える。見えることは力だが、そこを無条件に受容するのはどうか。「婚礼」の句、「手の中」の句の文体は特に常套。ここにいては危ない。「頬杖」の句、「カラオケ」の句は内容が陳腐。全体的にバランスはとれているが創造することへの意欲が欲しい。たとえ破れても。

 
07「気分はもう戦争」に一点。

「烏賊」の句は出色。あとは機智が走り過ぎた。アタマがいいひとなんだろうな。テストの句やリプトン紅茶の句は昔のモダンおばさんやおじさんは褒めるかもしれないが、そんなひとにだまされてはいけないしそんなひとをだますことに精力をつかうべきではない。機智の上をいくドンくさい「真実」がある。演出してもどうにもならない場所を、覚悟の上で見せてほしい。


総評

類想感をどう突破するかがまず問題だろう。文体が借り物で内容のテーマも類想だけど、動詞や副詞や助詞で工夫しましたというのでは、ただの「個性」狙いだ。個性じゃなくて方法を変える意気込みが欲しい。あとはモダンを辛らつに見ること、モダンの陳腐、ポストモダンの類想というのも世間には多い。批評性ばかりが強く出て現状おちょくりの内容になっても標語を読んでいるようで味気ない。右も左も前も後ろも全部見え透いているというところに自分を追い込んで、立往生してからの一歩を見たい。



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第2回週刊俳句賞 岩淵喜代子 選と選評

岩淵喜代子 選と選評



03「life」 3点

中で一番粒揃いなのはこの作品でした。「かりがね」「耳も耳」「手の中」取り合わせの感覚の柔軟さ。そして、叙述的な表現の「手袋の」「春宵」の句も詩情があって全体に好感の持てる句が並んでいました。


016「昼の月」 1点

全体的に無理のない表現で詩情を感じるフレーズでした。ことに「蝋梅や蛇口に残る一雫」の取り合わせの妙に共鳴いたしました。かといって、「雨傘」の句のさり気ない叙述も巧いです。


017「多孔質」 1点

虚実皮膜の虚の強い句があるのですが、その虚、例えば「いつせいに埴輪の歌いだす良夜」が宜えることに点数をいれました。「神の名は多すぎないか」は意表を突かれてしまいました。秋の蝉がなんともいえない良い取り合わせです。


01「屋根」 1点

10句のそれぞれが、俳句の骨法を得た描写力のある作品が多かったことに、点数をいれました。ことに、渋滞の」「夕ぐれの」「桔梗」「カーテン」など。中で一番面白く感じたのは「壁の絵」の句でした。「野分」を絶妙に生かしています。


全体には、着実な取り組みをしようという意識の見える作品が多くて、多分たくさん作っていくうちに面白くなりそうです。



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第2回週刊俳句賞 島田牙城 選と選評

島田牙城 選と選評


3点=07 気分はもう戦争

2点=16 昼の月

1点=10 ぽろぽろと


選評

二十二編を一読して、俳句を作りこんでゐる人とさうでない人の作品は歴然としてゐた。作りこんでゐる人の作品が滑らかなのに対して、さうでない人の作品はぎこちなかつた。しかし、滑らかな作品がいいのかといふと、けつしてそんなことはないのであつて、器用だけれども実がないといふ場合もある。

五・七・五定型は与へられてすでにそこにある道具なのではなく、自らが磨き上げてゆく道具なのだといふことは、肝に銘じてもらひたいし、通読したあとに自らの戒めの思ひとして痛感したことだ。

さて、はじめに残したのは六編。

01 07 09 10 13 16

01はそこそこの冒険もしながら、破綻の少ない詠みぶりで好感は持てた。「渋滞の」「熱もてる」「夕ぐれの」「桔梗の花」「カーテン吹かれ」に○を打つてゐる。しかし平均点なんだなあ。ぐいと僕を引き付けるものが無かつた。

13は○を打つたのは「交番のあたり」と「菜の花は」の二句にすぎないのだけれど、この作者の屈託の無さは買ひだなと思つた。ただし「略奪愛」一句による減点は大きい。

といふことで、この二編を先づ選考から落とす。

残る四編を何度も読んでいくうちに気付いたことがある。四編とも客観の眼が利いてゐるといふこと。冷徹に物を観察する視線が、自づと俳句の語彙に力を与へるのかも知れない。10には「私」「わたし」といふ一人称が二度も出てくるし、「つけまつげ」「頭蓋骨」「頭」だつて、この「私」のものに違ひないけれど、この「私」は作者なのかいと問はれたら、僕は違つてもいいといへる。詠む段で作者が作者自身を客観したのか、他者を「私」として詠んだのか、まつたくの想像上の「私」だつたのかは詮索しないが、この一編の「私」は創作上の「私」に成りえてゐる。その上一句一句が面白い。

蝶の眼の中でわたしが裏返る

に最も想像力を掻き立てる力があるが、「卒業期」「水槽に」「ぽろぽろと」「春の夕暮れ」あたりも、先行する句があるとしても一定レベルを獲得してゐるであらう。

悩んだのは16と09。悩んだ末に09の「ことごとく」「あをあをと」「ごちやとして」「かすかなる」などの措辞が引つかかることを難点として落とすこととした。09では「爛春の」「カーテンの」「尻のせて」に○を打つてはゐる。

16にはさうした安易に形容語にながれるといふ欠点がない。その上、

受刑者の横一列やクリスマス

雨傘を乾かしてゐる春の宵

コンタクトレンズにあふれ春の水

などには一種の風格すら漂つてゐる。よつて選に残すこととした。

最後に、三点を与へることとした07「気分はもう戦争」について触れねばならない。すごく荒い句たちである。「テスト全部満点」「リプトン紅茶永遠に」なんて、手元のコピーには大きなバッテンを付けてある。そのうへ、タイトルが悪すぎる。タイトルといふのは致命傷になりかねない。しかしそれを補ふに足るパワーを、この作者は内面に蔵してゐるやうだ。

開戦ぞ身近な猿の後頭部

ひろびろと乾くや印刷用の烏賊

竹やりに名前を彫りし彫り師かな

戦場を先づくちびるがもげてゆき

逃げまどふ防空づきん赤づきん

僕は五・七・五の定型感を習得するよりも、季語の本意を身に付けるよりも、なによりも、今何を書かねばならないのか、その書くべき「何」を持つことのはうが先だと日ごろ言つてゐる。その「何」かが俳句の語彙にパワーを与へるのだと思つてゐるから。この07一編には、そのパワーを感じたのである。

荒くてもいい。俳句といふ磨きうるその器を壊すほどのパワーこそ、俳句を手に入れてまだせいぜい数年であらう作家たちには望みたい。



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第2回週刊俳句賞 筑紫磐井 選と選評

筑紫磐井 選と選評


【総評】
選の仕方が難しくあえて厳格な方針を立ててみた。それは十句の中で良いと思った句を選び、後の句は切り捨てた。その選んだ句のみを候補作品として優劣比較をした。従って十句の中にどんなまずい句が混じっていても何ら影響を受けなかった。二句と五句を比較することもあったが、かといって五句を優先することもなかった。いわば私自身が予選をして応募したという状態で眺めてみたわけである。学生俳句ならば長いキャリアといっても二三年だろうから悪い点をあげつらってもしょうがない。いい点だけを評価したいと思ったらこういう方式になったのである。その結果、他の審査員とだいぶ違った結果になったかもしれない。

昨年の選では、応募句に似たような句が多いと憎まれ口をたたいたが、今回は結構多彩で楽しめた。どんな人が応募したのかちょっと興味がある。偉いように見える特別審査員はそんなに偉くはない(たぶん誰も偉いなどと思っていないでしょう)。審査員が選んだ句(選ばなかった句)というと気分が悪いかもしれないが、審査員が選ばせられてしまった句と考えれば主客逆転するわけで、選ばれなかった句は審査員の器が小さくて選べなかった可能性もある。楽しみは、他の審査員が1点も入れてなかった応募作を1位に推せていたら、今回審査員を引き受けさせていただいた甲斐もあろうというものである。

【作品評】

[1位:3点]
21 心の底

意外性がうまく俳諧の器にあっている。ありふれた日常性を、ほんのすこし、―――五ミリほどずらしただけで俳句が生まれることを生得しているに違いない。「有馬朗人」で俳句になるとは思わなかった。

蛇穴を出てとろとろの化粧水
花水木杉並区からリクエスト
黄砂降る有馬朗人の自筆かな


[2位:2点]
16 昼の月

微妙であえかな心理が心地よい。学生にして達者というのはやや気持ち悪いが、どうせ「少年易老学難成」であっという間に年は取るもの、そのときのいい財産になるであろう。

冬凪やうすく華やぐ三角州
臘梅や蛇口に残る一雫


[3位:1点]
09 ハーモニカ

一番俳諧味に富んでいた。微妙なのは「はからい」が見えることで、「この作者、やったな」といわれないことも俳句には大事だろう。

残る鴨ボート置き場のごちやとして
闌け爛春の物みな顔に見えし日よ
カーテンの波うちぎはへ春の雪
尻のせてふかき座椅子や百千鳥


[番外]

03 life

一番点も多く最後まで入選の候補に置いたが、入選を3人に絞った(誰が決めたわけでもない、私のこだわり)ためはみ出してしまった残念な作品。前3者に比べると、ほんのちょっと切れが欲しかった。

かりがねや背中で閉まる自動ドア
恥づかしささびしさぬるき懐炉揉む
バレンタインデーの靴の底に鋲
春宵の花屋に寄らす帰りけり
カラオケに来て泣いてゐる卒業子


05 傷ついて

応募作の中で一番若い人らしさを感じた。

冬の夜や愛を言葉にして陳腐
竜天に昇る追悼コンサート


08 きりん

養豚車揺れ助手席のポインセチア
無精髭嫌ひ嫌ひと鱈鍋す


13 青

交番のあたり明るし花の雨
回廊の慌しくて沈丁花


22 傘のうら

残雪の瘤のやうなる交差点
蒲公英にあるひとすぢの真空よ


【しめくくり】
学生で20人以上の応募があるというのはたいしたものである。昨年に比べて多彩と感じたのは、即物的写実的な佳句も混じっていたためであろう。ちなみに、今42歳で逝った福永耕二について書いているので、30年前の若い作家と比較して、現在の新世代が俳句について何を考えているか、と考えた。耕二は「俳句は姿勢」と言ったのだが…。私の「豈」でもこうした問題を特集してみたいと思っている。

  燕が切る空の十字はみづみづし 福永耕二
  雪上に何焚けばこの黒煙
  新宿ははるかなる墓碑鳥渡る



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第2回週刊俳句賞 互選結果

互選結果


〔互選と選評〕

01-07 →読む

08-14
 →読む

15-22 
→読む



〔互選点数上位作品〕

9点
22 浜いぶき 傘のうら

6点
10 小林鮎美 ぽろぽろと
13 岡本飛び地 青
06 奈月 海鳴り

5点
16 大穂照久 昼の月
09 生駒大祐 ハーモニカ
04 モル 異邦人

4点
03 山口優夢 life
01 藤田哲史 屋根
17 飯田哲弘 多孔質


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第2回週刊俳句賞 互選 01-07

互選 選と選評 01-07



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01 藤田哲史

まず、いいと思った作品を5つ、6つに絞って、その後残ったものの中から3つを選びました。9番の「ハーモニカ」、16番の「昼の月」、22番の「傘のうら」、にそれぞれ1点づつ。

それぞれにいい句があって、
9番は、

教会の影梅の木にかかりたる
残る鴨ボート置き場のごちやとして
尻のせてふかき座椅子や百千鳥
爛春の物みな顔にみえし日よ

16番は、

海岸に白き車や春浅し


春暁の鏡の裏の温みかな


蠟梅や蛇口に残る一雫


コンタクトレンズにあふれ春の水

22番では、

淡雪や展望室の仄暗し


蒲公英にあるひとすぢの真空よ


傘のうらの色やはらかき春の雨


ごつそりと雄蕊の束や落椿




9番は、まず、季語の使い方がうまい。言葉の雰囲気だけで作らないところがいい。
16番は、水と水に関する言葉で縛りをつけて、統一感を出している。切り取り方が鋭い。
22番は、発想というか、感じ方を大事にしている。言葉に手応えをもたせようともしている。


そのほかにも、いいと思ったのはあって、
17番の「多孔質」、3番の「life」。

17番の、
鯰打ちのめされ雪の積もるまま
が、かなり気になる句。
他の作品でも、季語を存分に飛ばしている。自由な作品。

3番は、行事が重なってドタバタしてますが、
妙なリアルさがある。どことなく翳りのようなものもあって。都会的です。
気を抜いて作ったようなのが無いのもいいですね。


その他にも面白いのはあるんですが。
(10番の「卒業期画家の名前の喫茶店」とか、13番の「略奪愛未遂のままか猫の恋」。)

以上です。

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02 田中志典

自分は、
06「海鳴り」に3点与えたいと思います。
理由は、まずタイトルに惹かれたのが大きいですが、
春ショール本音を描ききる鉛筆
など、カタカナ語の取入れが自然で、句のバランスが綺麗なところ。
そして、選ぶ言葉自体のセンスが良かったということなどです。
冬珊瑚兄が欲しいと海鳴りす
が総ての句のなかで一番惹かれました。

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03 山口優夢

01 屋根1点
09 ハーモニカ1点
16 昼の月1点

心惹かれた句の多さと全体の雰囲気的な統一感で選びました。

01は、
行々子夜の公園は木の密に
夕ぐれの明るさの瓜冷やしけり
団扇つかふ胡座の股に肘つけて
が好きでした。穏やかな言葉遣いの中に発見の楽しさがありました。

09は、
教会の影梅の木にかかりたる
カーテンの波うちぎはへ春の雪
春の灯のともり柱の短さよ
が好きでした。言葉によって発見された詩情が際立っていたかと思います。

16は、
冬凪やうすく華やぐ三角州
海岸に白き車や春浅し
春暁の鏡の裏の温みかな
が好きでした。何も言わずに黙って景色を見つめる作者のぼんやりと口をあけている様子が見えてくる気がしました。


他に好きだった句は、
06 クレームの電話アロエの花盛り
07 屏風もて運ぶ草生す屍かな
17 多孔質の友よしつかり憎め憎め
17 大根の切りくち乾きゆくを見ゆ
18 春の雨ガラスケースに土偶の眼
21 三寒四温喉元の髭残り
22 傘のうらの色やはらかき春の雨
22 ごつそりと雄蕊の束や落椿

です。この作品になら3点あげてもいい!と思えるようなたった一つの作品を見つけられなかったのは残念に思いました(参加者の僕が言うのもなんですが)。

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04 モル

「09 ハーモニカ」 2点

読後とてもほのぼのとした気持ちになり、10句統一してバランスのとれた読んでいて気持ちの良い作品だと思いました。10句全て春の季語で統一され、全体的にやわらかな色彩を感じさせながらも

 教会の影梅の木にかかりたる
 春の灯のともり柱の短さよ

などの句はやわらかな光の中に強い陰影も感じさせ、魅力的だと思いました。

 図書館の窓あをあをと春休み
 カーテンの波うちぎはへ春の雪

が特に好きな句でした。


「22 傘のうら」 1点

無意識のうちに日常の中に潜む裏側を見てしまう、そんな作者の姿勢を感じさせられる作品でした。どの句も丁寧な言葉で穏やかに描かれているのに、作者の冷静な視線を所々で感じハッとさせられることが多く、とても惹かれました。

 残雪の癌のようなる交差点
 蒲公英にあるひとすぢの真空よ
 傘のうらの色やはらかき春の雨

が特に好きな句でした。


他の作品にも魅力的な句がたくさんあり迷いました。好きだと思った句を少しのせます。

 01 カーテン吹かれ虫籠に届かざる
 03 手の中の鍵のつめたき吹雪かな
 10 蝶の眼の中でわたしが裏返る
 11 蛍光灯照るや螺旋の梨の皮
 13 交番のあたり明るし春の雨
 20 赤んぼう警戒しつつ手になずな

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05 羽田大佑

選は
3番「life」
16番「昼の月」
22番「傘のうら」
に1点づつです。

3番は「婚礼の胸を花野と思ひけり」「耳に耳触るる寒椿のやうに」「恥づかしささびしさぬるき懐炉揉む」がいいと思いました。
「婚礼の胸を花野と思ひけり」は発想の新しさと句の雰囲気が素晴らしいと思いました。
「耳に耳触るる寒椿のやうに」は青年期の心情が感じ取れる句だと思いました。

16番は「受刑者の横一列やクリスマス」「結氷をまだ見ぬ水辺にて遊ぶ」「雨傘を乾かしてゐる春の宵」がいいと思いました。

「受刑者の横一列やクリスマス」は今回最も心惹かれた句で、死刑囚たちの句を集めた句集「異空間の俳句たち」の句を思いだした。「雨傘を乾かしてゐる春の宵」は取り合わせが上手いと思いました。

22番は「淡雪や展望台の仄暗し」「傘のうらの色やはらかき春の雨」「踏青や髪上げてより鬼となる」がいいと思いました。
「淡雪や展望台の仄暗し」は正統的な句で、取り合わせが上手いと思います。
「踏青や髪上げてより鬼となる」は三橋鷹女の激情を詠み込んだ俳句を思いだした。

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06 奈月

まず、10「ぽろぽろと」に2点。

これは明らかにレベルがちがいましたね。とてもうまいですし、題の付け方も、他の自分に酔ってる題ではなく、しっかり芯を押さえてますし。また、句のレベルだけでなく、構成も美しい。前後の句がそれぞれもたれ掛からないで、しかも新しい世界を見せてくれる。とてもすばらしいと思いました。

次に03「life」に一点です。題は、英語の必要性を感じなかったのですが、嫌味はありませんでした。これも構成がなかなか上手いと感じましたが、多少緩い句がもたれ掛からないでいれば、上を勝っていたかと。

今回は構成を主として、選ばせていただきました。

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07 タニユウスケ

「03 life」
「11 大 和」
「17 多孔質」


の3作品に1点ずつ振り分けます。
以下、各作品へのコメントです。


03「life」

「婚礼の胸を花野と思ひけり」「耳に耳触るる寒椿のやうに」の2句は、派手で目立ちますが、あまり面白くないと思いました。比喩や言い換えに走らない作品のほうが好ましい気がしました。「かりがねや背中で閉まる自動ドア」の自動ドアの物体感(ちょっと怖い)、「手の中の鍵のつめたき吹雪かな」から確かに伝わってくる鍵の冷たさ(「吹雪」という下五の微かな裏切りもいいですね)、「手袋の指抽斗にはさむなり」で手袋の指を挟んでしまったときのぐにゃりとした気持ちの悪い感触といったところに共感しました。「春宵の花屋に寄らず帰りけり」の心の動きにも惹かれました。


11「大 和」

欠点を挙げようと思えばいくつでも指摘できるんですけど、それ以上に、愛すべき作品がたくさんありました。「新涼や死にゆく祖父と話題がない」の乾いた情感、「蛍光灯照るや螺旋の梨の皮」の思い切った空間構成、「たいていのものは輝く春夕日」「あの変な屋根は教会日足伸ぶ」の脱力した書きぶり。いずれも僕には魅力的に感じられました。さっき「欠点を挙げようと思えば…」なんて偉そうなことをいいましたが、改めて眺めると、先ほど欠点に見えたところも作者の計らいのように思えてきたりして…不思議です。「こんな俳句、誰が作ったっていいんじゃないの」という作品がずらずらと並ぶ中で、ちょっと作者の顔を見てみたいと思わせる作品でした。


17「多孔質」

「胸骨のうらを涼しき牛のちち」という句、「涼し」という季語を心理的な意味合いに転換するという手法はたびたび見られますが、それにしても上品な手口だなと驚きました。「神の名は多すぎないか秋の蝉」という口調は、今回の22作品の中ではとても目立ちましたし、言葉の意味するところにも鋭さを感じました。「いつせいに埴輪の歌いだす良夜」は、ややありきたりなメルヘンだと思いましたが、「ぬぬぬ」という異様な音を立てて伸びる爪や、幽霊の歯(この句、仮名遣いが違いますが)は、ただ受動的に俳句を書いている人からは出てこない素材であり、俳句を書く人間としての作者の意識の高さを感じました。



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第2回週刊俳句賞 互選 08-14

互選 選と選評 08-14


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08 石塚直子

17「多孔質」1点

春宵の爪はぬぬぬと伸びゆけり

「ぬぬぬ」という表現が実感を感じられた。「伸びゆけり」も、爪が生きているように、人間の、その人自身の成長を表すようで面白い。


13「青」1点

春色のネイルなぞなぞあそびなり

組み合わせの妙にやられました。年頃にしては子供っぽく、想像しても温かい情景が心惹かれます。


04「異邦人」1点

粉雪を食う全身を空にして

壮大な、あまりのスケールの大きさに感動しました。「食う」という行為が、何か神聖な、深い儀式のように感じられ心あらわれる句でした。


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09 生駒大祐

1点:「01 屋根」

渋滞の灯一連柏餅
夕ぐれの明るさの瓜冷やしけり
桔梗の花よりその葉あたたかき

など、語の選択に気を配った句に特に惹かれました。
全体として、身の回りの事象を飾らず丁寧に読むという姿勢が感じられて良かったです。


1点:「16 昼の月」

冬凪やうすく華やぐ三角州
海岸に白き車や春浅し
コンタクトレンズにあふれ春の水

透明感のある読み口に好感が持てました。
全体として無理のある句がなく、安定感があったのも長所でした。

1点:「21 心の底」

三寒四温喉元の髭残り
台本のB作が死ぬ月朧
蛇穴を出てとろとろの化粧水

多彩という印象でした。
部分的に取れない句もあるものの、振れ幅の大きさとしっかりとした詠み方をされている点で頂きました。

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10 小林鮎美

03、04、13、16、17、21、22でずいぶん迷いましたが、最終的に04に2点、22に1点にしました。

04「異邦人」 2点

少し作品全体のテンション(?)が高めで、色彩が鮮やかな印象を受けました。でも感傷的になりすぎてなくて、この作品の世界の捉え方みたいなものが、とても好きです。

ひまわりのみな孤独なるアラベスク
粉雪を食う全身を空にして
好きな子の跡をつければ遠花火
稲光吸い込んでゆく枕かな
異邦人の街へと続く夜店かな


22「傘のうら」 1点

お手本にしたい感じ。柔らかい質感の句もあれば「あるある!」ってゆー句もあって、読んでて楽しかったです。04とどちらに2点入れようか最後まで迷いました。

残雪の瘤のやうなる交差点
鉄骨の組み上がりけり木の芽吹く
蒲公英にあるひとすぢの真空よ
踏青や髪上げてより鬼となる


他に好きな句

03 恥づかしささびしさぬるき懐炉揉む
05 終盤の指揮は大きくクロッカス
07 終戦やリプトン紅茶永遠に
09 爛春の物みな顔にみえし日よ
03 菜の花は踏まないで手の鳴る方へ
16 コンタクトレンズにあふれ春の水
17 大根の切り口乾きゆくを見ゆ
21 さつきまで夜汽車なりけり春の潮

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11 らくは

09「ハーモニカ」に1点
16「昼の月」に1点
17「多孔質」に1点

09ハーモニカ

全体的に素直な印象の句が多くて好きでした。

16昼の月

「蝋梅や蛇口に残る一雫」が特に好きでした。

17多孔質

「大根の切りくち乾きゆくを見ゆ」が特に好きでした。


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12 悠城

02「引鳥」に3点を入れます

全体的に私の好みの句が多かったのと、読みやすさがありました。


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13 岡本飛び地

06 海鳴り 3点

取り合わせた2つの事象の間に生まれる風景が広く、それがどこか微笑ましく、優しさも感じられます。

また、作品全体に透明感があって、それがどうしようもなく魅力的なのです。
この作品に賞を取ってほしい、と素直に思えます。
その思いを込めて、3点。


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14 山風嵐

03「life」
19「日常の中で」
22「傘のうら」

にそれぞれ1点ずつ入れます。

それぞれに日常の一場面が見えるような句があり、情景がすぐに浮かんできて良いなと思いました。



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第2回週刊俳句賞 互選 15-22

互選 選と選評 15-22


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15 水篶

04「異邦人」1点
07「気分はもう戦争」1点
18「来歴否認」1点

上の作品はほとんど、感覚で選びました。どこが・何が、というのはあまり無いのですが、読んだ感じが好みに合っていたので選びました。

俳句に関しては、初心者で選ぶと云う経験も踏んでいないので、本当に「あ、好きかも」といった調子で選びました。ほかの作品もとても個性的で良かったので、絞るのが存外大変でした。


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16 大穂照久

22 傘のうら 2点

「淡雪や」、「白魚に」、「ごつそりと」をとりました。

展望室の暗さや、椿の雄蕊など繊細なモチーフが心地よかったです。
特に「ごつそりと」の句は白眉だと思います。

抑制的であることは「賞」に出す作品としては押しが弱いかもしれませんが、
作品の完成度から、この作品を推します。


10 ぽろぽろと 1点

「春の私」、「蝶の眼」、「春の夕暮れ」をとりました。

生活のなかの幻想的な部分を上手く掬い上げていると思います。
有機的で豊潤な印象を受けました。
ただ、作品のトーンが一定ではないのが残念でした。


上の作品以外に好きな句を挙げます。

02 ざわめいて鉢の金魚は転回す
03 恥づかしささびしさぬるき懐炉揉む
06 母は庭に夢を隠している二月
07 ひろびろと乾くや印刷用の烏賊
13 交番のあたり明るし花の雨
17 胸骨のうらを涼しき牛のちち


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17 飯田哲弘

2点 01 屋根

夕ぐれの明るさの瓜冷やしけり

…これが全作品を通じての特選でした。
他に「カーテン吹かれ虫籠に届かざる」も好感。

1点 07 気分はもう戦争

…異色。行儀の良い作品群の中での意欲を評価。


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18 久留島元

05「傷ついて」1点。

「雪月夜」、「冬苺」、など類想に流れた句も多いのだが、自らそれを「陳腐」と断じる醒めた目も持っているあたり好感を持つ。

10「ぽろぽろと」1点。

今回、素直に一番上手い、と思わされた。「梅」と「つけまつげ」の取り合わせ、「トイレの青い水」への着眼、「魚の歯」の意外さ、瑕瑾のない上手さである。

17「多孔質」1点。

「幽霊」「埴輪」など奇怪な登場人(?)物が並ぶ十句はどれも楽しい。こういった世界は自分自身が試していきたい領域であるので素直に共感。ただ標題「多孔質」は無季だろうか?俳句の定型にはまった、変な句を読んでみたい。


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19 果糖由宇

13番の「青」に3点

目の付けどころが凄い。

特にかすみ草~や祖母の梅~の句が好みであった。


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20 真白

04「異邦人」に1点。
13「青」に2点。

西瓜畑隠れん坊の息消える

ゆったりと曲がる二車線春の闇
菜の花は踏まないで手の鳴る方へ

この三句が特に好きです。

「青」は「まあるく」「なぞなぞ」「ぬいぐるみ」「子猫」など可愛い言葉が多く、読んでいて楽しかったです。


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21 酒井俊祐

2点 22「傘のうら」
1点 18「来歴否認」

そもそもこういう作品を鑑賞する際どういう風に見るかによって評価も変わってくるとは思いますが、10句で1作品である以上、10句全体としての完成度を見るのがいいと思います。私はそういう風に判断して、上の2作品を選びました。

22「傘のうら」
まず、作品のレベルが非常に高い。ちょっと俳句的、落ち着きすぎという意見もあるかもしれないが、

鉄骨の組み上がりけり木の芽吹く
 のシンプルながらもダイナミックな景の再現力、

傘のうらの色やはらかき春の雨
 の視点のつけどころ、

踏青や顔上げてより鬼となる
 の、まるで言い当てられたかのような感覚(もっとも私に理解できただけ、あるいは私が勘違いしているだけかもしれないが)

この3つの要素において頭一つ抜けていると思った。

何より、「理解して欲しい」「自分の感情をぶつけたい」というありがちな若さが噴出しやすい、実際噴出しているこの賞の作品群の中で、純粋に575を見極め、眼前の素材で何が表現できるかを模索しているこの姿勢がとてもすばらしいと、同年代として尊敬する。


18「来歴否認」

どうせやるならここまでやってほしい、と思わせる作品。1句1句見たときの出来は正直ばらつきがあるが、自分の世界観をここまで徹底して打ち出していこうという勢いが他の作品にない突き抜けた点だと思った。


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22 浜いぶき


10 ぽろぽろと  2点

句の密度、1句の持つ重力のようなものが、一番伝わってきた作品でした。抽象的な内容も、「もの」から出発してイメージされているので、一句が確実なものとして立っています。時間をおいて再読しても、その度に新鮮に打たれてしまう予感がしました。

ぽろぽろと梅が咲く日のつけまつげ

梅という木(枝)の持つ、どこか人工的で浮世離れしたような印象と、そこにつく花のちいさくて不可思議なあかるさ。それが「つけまつげ」に驚くほどぴったりです。テンションがフラットであるところも好きでした。

また、具体的な描写なしに、最小限の言葉で、景が鮮やかに浮かんでくる巧みさ。

この先は各駅停車春の旅

ここまでの春の旅と、ここからの春の旅、

卒業期画家の名前の喫茶店

卒業期になってはじめて意識しはじめる、行きつけの喫茶店の名前。

後半では、作者独特の「身体」への視点が生きています。

梅を見ていて頭蓋骨白くなる
蝶の眼の中でわたしが裏返る
人間の頭重たき遅日かな

意味が分かる、素敵な感覚である、ということに加えて、爪あとのようなものを残していってもらった気がして、作品のそのような力に魅力を感じました。


20 暖かな、冷たくとも暖かな光 1点

10句を通じて浮かびあがる作者の感性に、もっとも魅了されました。感覚が優れている作品は他にも沢山あり、また俳句に慣れていたり、ファッションとしてよく完成されていたりする作品もありましたが、「完成度」というものを一旦忘れると、この作者のこれからの作品を一番見てみたい気がしました。

穏やかな草摘む指に海水晶(アクアマリン)
水槽にビー玉落とす暖かし

草→指→指輪のアクアマリン、という「穏やかな」色彩の移動、水槽を落ちてゆきながらゆっくりと廻るビー玉のなかの「暖か」な色模様と、反射する光。ほんとうに素敵な世界です。

沈黙を轆轤でまわす外は雪
赤んぼう警戒しつつ手になずな

他人に対する本能的な警戒心も、「轆轤」や「なずな」という、自分が手でもつことのできる「親しいもの」を通して描かれていることで、惹きつけられる景となっています。

裸木をてんでに撓める吹雪かな
は、自由に対象を捉えながらも、しっかりとしたつくりの佳句だと思いました。



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