2008-04-06

第2回週刊俳句賞 互選 15-22

互選 選と選評 15-22


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15 水篶

04「異邦人」1点
07「気分はもう戦争」1点
18「来歴否認」1点

上の作品はほとんど、感覚で選びました。どこが・何が、というのはあまり無いのですが、読んだ感じが好みに合っていたので選びました。

俳句に関しては、初心者で選ぶと云う経験も踏んでいないので、本当に「あ、好きかも」といった調子で選びました。ほかの作品もとても個性的で良かったので、絞るのが存外大変でした。


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16 大穂照久

22 傘のうら 2点

「淡雪や」、「白魚に」、「ごつそりと」をとりました。

展望室の暗さや、椿の雄蕊など繊細なモチーフが心地よかったです。
特に「ごつそりと」の句は白眉だと思います。

抑制的であることは「賞」に出す作品としては押しが弱いかもしれませんが、
作品の完成度から、この作品を推します。


10 ぽろぽろと 1点

「春の私」、「蝶の眼」、「春の夕暮れ」をとりました。

生活のなかの幻想的な部分を上手く掬い上げていると思います。
有機的で豊潤な印象を受けました。
ただ、作品のトーンが一定ではないのが残念でした。


上の作品以外に好きな句を挙げます。

02 ざわめいて鉢の金魚は転回す
03 恥づかしささびしさぬるき懐炉揉む
06 母は庭に夢を隠している二月
07 ひろびろと乾くや印刷用の烏賊
13 交番のあたり明るし花の雨
17 胸骨のうらを涼しき牛のちち


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17 飯田哲弘

2点 01 屋根

夕ぐれの明るさの瓜冷やしけり

…これが全作品を通じての特選でした。
他に「カーテン吹かれ虫籠に届かざる」も好感。

1点 07 気分はもう戦争

…異色。行儀の良い作品群の中での意欲を評価。


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18 久留島元

05「傷ついて」1点。

「雪月夜」、「冬苺」、など類想に流れた句も多いのだが、自らそれを「陳腐」と断じる醒めた目も持っているあたり好感を持つ。

10「ぽろぽろと」1点。

今回、素直に一番上手い、と思わされた。「梅」と「つけまつげ」の取り合わせ、「トイレの青い水」への着眼、「魚の歯」の意外さ、瑕瑾のない上手さである。

17「多孔質」1点。

「幽霊」「埴輪」など奇怪な登場人(?)物が並ぶ十句はどれも楽しい。こういった世界は自分自身が試していきたい領域であるので素直に共感。ただ標題「多孔質」は無季だろうか?俳句の定型にはまった、変な句を読んでみたい。


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19 果糖由宇

13番の「青」に3点

目の付けどころが凄い。

特にかすみ草~や祖母の梅~の句が好みであった。


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20 真白

04「異邦人」に1点。
13「青」に2点。

西瓜畑隠れん坊の息消える

ゆったりと曲がる二車線春の闇
菜の花は踏まないで手の鳴る方へ

この三句が特に好きです。

「青」は「まあるく」「なぞなぞ」「ぬいぐるみ」「子猫」など可愛い言葉が多く、読んでいて楽しかったです。


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21 酒井俊祐

2点 22「傘のうら」
1点 18「来歴否認」

そもそもこういう作品を鑑賞する際どういう風に見るかによって評価も変わってくるとは思いますが、10句で1作品である以上、10句全体としての完成度を見るのがいいと思います。私はそういう風に判断して、上の2作品を選びました。

22「傘のうら」
まず、作品のレベルが非常に高い。ちょっと俳句的、落ち着きすぎという意見もあるかもしれないが、

鉄骨の組み上がりけり木の芽吹く
 のシンプルながらもダイナミックな景の再現力、

傘のうらの色やはらかき春の雨
 の視点のつけどころ、

踏青や顔上げてより鬼となる
 の、まるで言い当てられたかのような感覚(もっとも私に理解できただけ、あるいは私が勘違いしているだけかもしれないが)

この3つの要素において頭一つ抜けていると思った。

何より、「理解して欲しい」「自分の感情をぶつけたい」というありがちな若さが噴出しやすい、実際噴出しているこの賞の作品群の中で、純粋に575を見極め、眼前の素材で何が表現できるかを模索しているこの姿勢がとてもすばらしいと、同年代として尊敬する。


18「来歴否認」

どうせやるならここまでやってほしい、と思わせる作品。1句1句見たときの出来は正直ばらつきがあるが、自分の世界観をここまで徹底して打ち出していこうという勢いが他の作品にない突き抜けた点だと思った。


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22 浜いぶき


10 ぽろぽろと  2点

句の密度、1句の持つ重力のようなものが、一番伝わってきた作品でした。抽象的な内容も、「もの」から出発してイメージされているので、一句が確実なものとして立っています。時間をおいて再読しても、その度に新鮮に打たれてしまう予感がしました。

ぽろぽろと梅が咲く日のつけまつげ

梅という木(枝)の持つ、どこか人工的で浮世離れしたような印象と、そこにつく花のちいさくて不可思議なあかるさ。それが「つけまつげ」に驚くほどぴったりです。テンションがフラットであるところも好きでした。

また、具体的な描写なしに、最小限の言葉で、景が鮮やかに浮かんでくる巧みさ。

この先は各駅停車春の旅

ここまでの春の旅と、ここからの春の旅、

卒業期画家の名前の喫茶店

卒業期になってはじめて意識しはじめる、行きつけの喫茶店の名前。

後半では、作者独特の「身体」への視点が生きています。

梅を見ていて頭蓋骨白くなる
蝶の眼の中でわたしが裏返る
人間の頭重たき遅日かな

意味が分かる、素敵な感覚である、ということに加えて、爪あとのようなものを残していってもらった気がして、作品のそのような力に魅力を感じました。


20 暖かな、冷たくとも暖かな光 1点

10句を通じて浮かびあがる作者の感性に、もっとも魅了されました。感覚が優れている作品は他にも沢山あり、また俳句に慣れていたり、ファッションとしてよく完成されていたりする作品もありましたが、「完成度」というものを一旦忘れると、この作者のこれからの作品を一番見てみたい気がしました。

穏やかな草摘む指に海水晶(アクアマリン)
水槽にビー玉落とす暖かし

草→指→指輪のアクアマリン、という「穏やかな」色彩の移動、水槽を落ちてゆきながらゆっくりと廻るビー玉のなかの「暖か」な色模様と、反射する光。ほんとうに素敵な世界です。

沈黙を轆轤でまわす外は雪
赤んぼう警戒しつつ手になずな

他人に対する本能的な警戒心も、「轆轤」や「なずな」という、自分が手でもつことのできる「親しいもの」を通して描かれていることで、惹きつけられる景となっています。

裸木をてんでに撓める吹雪かな
は、自由に対象を捉えながらも、しっかりとしたつくりの佳句だと思いました。





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